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DUNE/デューン 砂の惑星の盆栽のレビュー・感想・評価

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)
4.6
時代がDUNEに追い付いた


 映像化すれば失敗する!で有名なフランク・ハーバートの伝説的SF小説『DUNE』を遂にドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が映画化。
 『メッセージ』『ブレードランナー 2049』などで映画を撮る度に映像革命を起こす彼が実写化不可能である本作の監督に赴任したとのことで安心して鑑賞しました。そしてその出来が正に、『2001年宇宙の旅』『スター・ウォーズ/新たなる希望』で公開当時、直接脅威の映像革命を体験出来なかった者達へのラブレターなのかと思うほどの完成度。モノリスを超える"なにか"がスクリーンには存在します。
本作に限ってはIMAXでの鑑賞が全てです。通常字幕とIMAX字幕の2回連続で鑑賞しましたが、IMAXは最高の映像体験を肌で感じ取れるはず。

 物語は、アトレイデス家が皇帝からの命令により香料 メランジの唯一の供給源である惑星アラキス(デューン/砂の惑星)を統治するべく旅立つ。しかしそれら全ては、皇帝と宿敵ハルコンネン家による陰謀であった。絶体絶命となったポールは全宇宙の救世主となれるのか。

 原作ファンである僕にとってリンチ版は悲惨な作品でしたが、今回の映画化は「これだよ、これ!俺が観たかった『DUNE』は!」と号泣してしまったほど原作に忠実です。本作は『DUNE PART ONE』ということもあり、本編は原作の前半部分までしか観れません。ですが、それでいいんです。無理に一話完結にしてしまうとリンチ版の二の舞いですから。
ジェシカの描き方が1番褒めたいところ。前半の主人公はポールとジェシカの2人といってもいいほど重要な人物。約2時間半の序章を使ってポールとジェシカの物語を構成する。ここが恐ろしいほど原作通りなんです。

 本作の目玉でもある「映像」は映画館だからこそ体験出来る圧倒的破壊力を持っています。例えるなら、何体ものモノリスが本気を出して宇宙を支配するようなもの(語彙力)。そして監督がドゥニ・ヴィルヌーヴということもあり「何かを失い、絶望の淵から這い上がるヒーロー誕生譚」が本作『DUNE』です。

 撮影監督は『ゼロ・ダーク・サーティ』などのグレイグ・フレイザー。やはり彼の撮る映像は「闇」が抽象的。よくある「闇の中にある光」ではなく、とことん「闇」を撮る。特に本作では真昼の砂漠の眩しさと夜の暗さの対比が美しく表現されています。撮影の天才 ロジャー・ディーキンスとはひと味違う一面を持っていますね。

 政治的でもあり、宗教的でもある本作。ただのSFに留まらないドゥニ・ヴィルヌーヴとフランク・ハーバートの化学反応が劇薬となる作品でした。

 チャニの最後の言葉「始まったばかり」
 この言葉の通り、本当の『DUNE』はここからです。胸熱な後半をドゥニ・ヴィルヌーヴ監督がどう映像化するのか楽しみです。
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