April01

DUNE/デューン 砂の惑星のApril01のレビュー・感想・評価

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)
3.8
IMAXレーザー GT凄い!
とはいえ、この原作、完全な映画化は無理なんですよ、たぶん。
この映画で見たもの=デューン砂の惑星ではない。
デューンの世界を堪能したければ原作を読まなくてはならない。そのきっかけを作ってくれた本作に感謝の気持ちしかない。
この世界を美しく忠実に可視化したことは素晴らしく本当に映像美を楽しませて頂いた!

全編に渡り文句なしの映像表現、砂丘の描写も美しいけれど、爆発の炎が特に印象に残る。あの炎のそばに近寄りたい、なんなら飛び込みたいかも、とまで思ってしまう。爆発の炎って普通は恐怖でありネガティヴなんだけど美しいと肯定的に見たのは初めてかも。

でも正直言って前半にすぎないということを加味しても、娯楽作品として面白いかと言われれば微妙、むしろつまらない。
あーあ、自分が悪いのか〜残念、高みに加われない自分に失望だなと思って自戒の気持ちから試しに原作を読んでみたら、気が狂いそうなくらい引き込まれて夢中になる!!!何これ、すごい!!!

この世界の映像化は文字の及ばぬところかもしれないけれど、内面世界は文字でしか読み取れない!!!

映画が特に描けていないと思うのは登場人物の心理描写。みんなそれぞれ頭の中すごい色々考えてるわけで、その思いをたどるのがとても深くて面白い。

ベネ・ゲセリットとメンタート、特別な能力を持つものたち同士の会話、持たないものと会話する時の頭の中、能力を持つもの同士の心理的駆け引きは特に読み応えある。裏の裏をかくような。

そして大事なことなんだけど、原作でカインズ博士は男です!
原作で好きなのが、敵対的に見えたカインズが、公爵の味方になってゆく心理的過程。
その過程は前公爵も現公爵(つまりポール)との関係性においても共に生きていて、目的の為に政治闘争に巻き込まれない賢さを持ちながらも仕えるべき人物を見抜く生態学者ならではの感情に流されない冷静な客観性に加えて決めたら引かない強さと状況判断、この人のドライさは登場人物の中でも群を抜いて好き。
セリフも彼ならではなわけで。なんで勝手にキャラ変してるの?なんでもかんでも男を女に置き換えれば褒められるという風潮、本当にウザい!

原作上巻p303
おれはこの公爵が好きだ
この言葉にオー!となる
映画における、性別変えて時代に合わせてという建前ふりかざして迎合するすり寄りが気持ち悪すぎる。原作が好き!!!と強調しまくってやる、本当に。

ポールの悟り、母を超える悟り
悟りを得る保水テントの中でのやり取り
映画は全然描いてない!と思えたんだけど。
それとも心理の激変は後半に持ち越すの?それとも描いたつもりなのかな?

ティモシーファンには申し訳ないけれど
ティモシーの顔がいつもきれいすぎだし、髪型セット決まりすぎ。
砂中テントから這い出した時なんであんなにこざっぱりきれい?
ソプター不時着の後なんであんなにこざっぱりきれい?
決闘中も後もなんであんなにこざっぱりきれい?

まるであのツヤ肌とクルリンと決めたカールがかったヘアーを崩してはならない決まりがあるか契約でもしてるかのよう。

こざっぱりしたイケメンシャラメが、アクション!で監督がキューを出すと共に颯爽とテントから出ました、動き出しました、という風に見えて仕方なくて。

アンドリュー・ガーフィールドが「沈黙 -サイレンス-」で長期間牢屋に閉じ込められて他の日本人俳優がズタボロなのに一人だけツヤツヤサラサラヘアで違和感あったことを思い出す。あそこは脂ぎったギトギトヘアでなければリアリティゼロ。演技が良いだけに残念だな~と変に冷めてしまったっけ。

内面が描けてないと感じてしまったのは、そういう外見上の不満のせいかもしれない。つまり常にカッコ良すぎるという、要は平板。

冒頭から女が出てくる予知ビジョン、夢の繰り返しがくどい。
ゼンデイヤに対して悪気はないけど、伏線として張りすぎで、食傷気味。それに原作を読んでイメージした自分のチェイニー像とちょっと違う。内面の強さでは不十分で外側からわかりやすく強い女として描かないと最近は受け入れられないのかな。
ポールが心の中で思うこと、もしくは潜在意識にあって形にならないまま頭をよぎる予感が重要でそれを映像で表現しなければならないから、ああもくどくなってしまうのかな。

描かれていないことを挙げればキリがないけれど、ガーニイ・ハレックが有能な戦士であると同時に、どんなに素晴らしい楽士であり吟遊詩人であるかを、音で勝負できるからこそ映像化しないのはもったいない。

皮肉にも、受動的に視覚で入ってくる半ば強制的な映像体験よりも、能動的に限られた文字数から主体的に心の中で世界を作る読書という作業の素晴らしさを再認識することになるとは。

でもヴィルヌーヴ監督好きだから、後半パート2期待してる!!!
April01

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