磯部たくみ

DUNE/デューン 砂の惑星の磯部たくみのレビュー・感想・評価

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)
4.5
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のSF長編大作。
1965年に刊行されたSF小説「デューン/砂の惑星」、これまでにデヴィッド・リンチ監督やジョン・ハリソン監督が映像化を試みていますが、多様な要素が複雑に絡み合った壮大な本作は、「映像化不可能作品」ともカテゴライズされるSFの代表的存在であり、その映像化はドゥニの長年の夢でもあったようです。

そんなドゥニが贈るSF長編大作「デューン/砂の惑星」で印象的なのは、東アジアを思わせる「間」を有する作品でありながらも、「間延び」していない点だったように思います。華美でありながらも、豪勢ではなく、重厚感は纏いつつも、雄雄しくはないのが、ドゥニの代表作である「ブレードランナー2049」「メッセージ」を経て、ドゥニが得た最上の表現だったのではないでしょうか。

この「間延び」しなかった最大の理由はドゥニの采配ということは言うまでもありませんが、やはり圧巻の音楽と映像があってこそだと思います。すなわち「ハンス・ジマー」、そして「グリーグ・フレイザー」両名プレーヤーの素晴らしい活躍があってこそということですね。私はハンスの大ファンで(鑑賞時その認識はありませんでしたが…)、所謂激アツタッグだったと思います。
またグリーグは直近の作品「THE BATMAN」で映像好きから、かなりの評判を集めている通り、素晴らしい映像だったと思います。それも単に、最新の技術を結集させているだけではなく、CGに頼り切らない現場での撮影に強く拘った故だと強く感じます。

また若手二役の起用で恋仲ライクに描写するのはなんとかマンをやはり想起させてしまいますが、レベッカ・ファーガソンやジェイソン・モモアで締めるあたり個人的に歓喜!といったところです。笑 ダンカンのキャラ作りは非常に秀逸で、ポールが大人へと階段を足をかけるキーパーソンとして非常に印象的でした。(あぁいった関係性素敵ですよね)

あとはやはり、ティモシー・シャラメ。ここまでバチっとハマるともう気持ちが良いとしか言えませんし、あの神秘的で奥ゆかしい表情(適切な表現かは分かりませんが、日本語的なアンニュイさ)は引き込まれるものがあり、本作をより一層味わい深いものにしてくれたと思います。

本作は私が映画にどっぷりハマるきっかけになった作品なので非常に思い入れが深く、贔屓目なのかもしれませんが、それでもFilmarksの評価が低いのにかなり驚きました。(進行が遅いとかが理由なのかな?) Part1では原作のおよそ半分程をカバーしている為、様々な要素をカバーしつつ各国の前後関係等も整理し、観客を置いていっていないだけで前編としてのクオリティは非常に高いのではないでしょうか。

作中に余白を持たせ、主張を強めたり強調部をより一層ヴィヴィッドにするのには賛成的で、本作はかなりヴィジュアル面で満足感があるので引き算が効いているように感じました。端的に言うのであれば、「やり過ぎていない」のに「充足感で満ち溢れる」、上映後こういった気持ちになりました。いやぁ次作が非常に楽しみです!
磯部たくみ

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