Cisaraghi

リマスター サム・クックのCisaraghiのレビュー・感想・評価

リマスター サム・クック(2019年製作の映画)
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天才的な歌手にして作曲家だったサムクック。人種差別に公然と抗議行動を起こした仲間の黒人歌手が殺されてしまったにも関わらず、自らの抗議行動を止めることはなかった。スマートで有能なビジネスマンとしての能力も備え、牧師さんの息子らしく、greater good を行うべく事業を通じて同胞のために力を尽くそうとしていた矢先に殺されてしまった。そのサムクックが世に出て短い人生を終えるまでのドキュメンタリー。殺人事件には疑惑が残っており、偉大な人物の死も警察にとってはBlack Lives Don't Matter な1件のひとつに過ぎず、まともな捜査がなされなかったことを示唆している。

あの名曲 A Change is Gonna Come が公民権運動のことを歌っていると知ったのは迂闊にもつい先日なのだが、ボブ・ディランの「風に吹かれて」に触発されて作られたとか(自分でも歌っているが、まるで別の歌のよう)、圧力をかけられ、発表されたのはサムクックの死後だったことなどはこの映画を観て初めて知った。ボールドウィンを愛読していて周囲の人にも薦めていたとか、マルコムXやモハメド・アリと懇意だったとか、他にも初めて知るエピソードが多かった。マーティン・ルーサー・キング、マルコムX、サムクック、偉大な黒人リーダー達が悉く殺されてしまったその背後に、歴史を変えさせまいとする白くどす黒い意志が存在したことをまざまざと感じた。
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