千年女優

グレース・オブ・ゴッド 告発の時の千年女優のレビュー・感想・評価

3.5
フランスのリヨンに妻子と暮らす銀行員の男性で、家族揃ってキリスト教を信仰する敬虔な宗徒のアレクサンドル・ゲラン。かつてのボーイスカウト仲間と今でもトラウマに残る少年時代に神父プレナから受けた性的虐待の告発を決意した彼が、証言を拒む被害者や困惑する家族を根気強く説得して世論を味方につける様を描くドラマ映画です。

自身がゲイであることから多くの作品で同性愛を取り扱うフランス人監督のフランソワ・オゾンが、1972年から1991年にかけて起こって2016年にようやく有志達による告発がなされた性的虐待事件を映画化した2018年公開の作品で、真摯な作風が評価されてベルリン国際映画祭で銀熊賞を獲得し、公開後の2019年の有罪判決に漕ぎつけました。

センセーショナルな題材を扱う作品とあって劇的な演出に走ることなく、実際の被害者たちがそうであったように忍耐強く告発までの軌跡を追います。物語がやや閉塞的に感じられて観客を巻き込んでいくような力強いダイナミズムには欠けますが、主体をひとつに絞らずに複数の目線から捉えることで問題の深刻さを浮き彫りにする一作です。
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