小波norisuke

グレース・オブ・ゴッド 告発の時の小波norisukeのレビュー・感想・評価

4.0
タイトルがあまりにも皮肉で痛烈だ。「神の恩寵により」。
この言葉が劇中で発せられる場面に衝撃を受けた。聖職者が自らの罪を悔い改めることなく、開き直るために、この言葉を用いる醜悪さに、身の毛がよだつ。

被害者が仲介者によって加害者と手を結ばされ、「主の祈り」を祈らされる場面も辛辣だ。キリストが教えた神聖な祈りを、聖職者の罪を軽んじ、隠蔽するために利用していることが、とてもおぞましい。

聖職者による少年への性的虐待事件を扱った映画としては、『スポットライト』がある。『スポットライト』は、カトリック教会という巨大権力と対峙するジャーナリストの闘いを描いており、重い題材でありながら、ジャーナリストが勝利する展開は爽快であった。

一方、本作は、被害者たちが長年の沈黙を破って加害者と教会組織を告発していく過程を描く。被害者が過去に受けた被害と現在も続くトラウマと向き合い、葛藤する姿を、丁寧に描写している。被害者の苦痛が画面から溢れてきているようで、非常に辛かった。

そして、ラストで被害者の息子が父に投げかける問いが、胸に突き刺さる。

フランスでは誰もが知っている事件らしい。オゾン監督らしい、ストーリーテリングの巧さが際立つこの映画を通して、事件について知ることができてよかった。
小波norisuke

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