ふじこ

在りし日の歌のふじこのネタバレレビュー・内容・結末

在りし日の歌(2019年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

もったいなさ過ぎて悔しくなってしまった。
いい役者、いい舞台、空気の色も撮影もいい。もちろん一人っ子政策に絡めた話も興味がある。

だと言うのに、どうして無用な時系列の入れ替えを多用してしまったのか…。
効果的な部分もあったとは思うけれど、大部分が余計だった。
大きく飛ばないシーンは両親の姿も全然変化なく、(今何年だ…?あれがこうで…?)と話を飲み込むことに無駄な労力を使わされ、集中力を削がれてしまった。

大切な一人息子シンをある日事故で亡くしてしまい、一緒に遊んでいた同じ日に生まれた同い年の親友の家族とも気まずくなり、住み慣れた工場近くのアパートを出る。
以前に2人目として妊娠したのがバレて強制的に堕胎させられ二度と妊娠できなくなってしまい、養子をとって海の側で暮らしているけれど、その子が長じるに連れ家族関係が微妙になりその子はグレて家を出ていく。

こんな感じで不幸のラッシュなんだけれども、主役の夫婦の演技がとても良い。
2人とも知らない俳優だったけれど、やるなぁ中国、と思わされる。

長い時間が経ち、気不味くなって別れた息子の親友の母親(親同士、同僚で友人だった)に呼ばれ久し振りの再会ののち、その家の息子が”あの日嫌がるシンを無理やり川へ連れて行き、自分が突き飛ばしたせいで死んだ”と涙ながらに告白する。
それを静かに聞く両親の回想で、悲しみに沈む家に親友の父親が”息子を殺してくれ”と乗り込んでくる。しかしシンの両親は、二度とそんな事を言うな、あの子はまだ子供だからきっと忘れる、こんな事を背負わせてはならない、と説得する。

静かに静かに生きてきたこのシンの両親の人柄がもうたまらんかった。
この酷い構成がなかったらきっと泣いていたと思う。
本当に心から勿体なくて、それが一番悲しい。

あ、あとシンの父親が一度浮気して出来た風だった子供がどう見ても白人の血が入ってて、最後の方で拍子抜けするシーンがあったけどあのエピソードだけは意味が分からなかった。
惚れてたっぽいから、子供が出来たことにして奪いたかったのかな…?

養子となった方のシンの描写ももっと欲しかったけれど、精神的に大人になった彼と両親が幸せになったら良いなあ、と思う。
ふじこ

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