あろわ

赤い闇 スターリンの冷たい大地でのあろわのレビュー・感想・評価

4.6
世界恐慌の中で唯一繁栄を遂げていたスターリンの統治するソ連。その財源を探るべくウクライナに乗り込む一人の英国人記者の伝記。
ヨーロッパの穀倉ともよばれたウクライナの肥沃な土地でおきた飢餓、ホロドモールの状況が語られる。

ホロドモールとは、1932〜33年にかけてウクライナで起きた人工的な大飢餓のことで、飢餓ジェノサイド(ある集団を抹消する殺戮)・スターリン飢餓とも言われている。民族の絶滅を目的としていたわけではないという考えもあるが(ロシア内でも飢餓は起こっていた)、ウクライナから食料を奪い取る対応は徹底的で、計画的な見殺しとも言われたんだとか。これにより数百万人もの人が亡くなり、道に死体があることにも慣れてしまうような状況だったらしい。
※上記はあくまで自分用の備忘録であって信憑性は不確かな旨ご了承ください。気になる方はご自身で調べられることをおすすめします🙇‍♀️


-------以下ネタバレ-------✂︎--------------------------


世間からの評価も高いニューヨークタイムズの記者はソ連に買収され不埒なパーティに明け暮れながら真実から目を背けていたり(主人公がウクライナの真実を語った際にはニューヨークタイムズに反論記事が掲載される)、真実を求めて行動していた記者の友人が不当に殺害されていたり、主人公の行手を阻む大きなものの存在が怖い。
また、本作ではモノクロで描かれるウクライナで起こってた飢餓状況下での人々の行動(おにいちゃんの肉を食べる子どもたち)、悲痛な気持ちを歌う曲に胸が痛む。

ウクライナとロシアの間にはこんな歴史もあったことを知ることで、いまの状況の根深さをまた少しだけ知った(SNSでみた、ウクライナはロシアにとって、日本の京都的な存在---みたいなのがなんとなく頭に残っていたけど)。

本作の時代では発信受信できる情報量の多くを新聞が占めていて、如何に真実をおおきな力に捻じ曲げられずにたくさんの人々に伝えるかが難しかった。いまではネットが普及し、誰もが映像付きで情報を発信できることで、ウクライナの現状が世界に共有され、またロシア内で情報統制されていてもじわじわと真実は伝わっていく、はず…


作中に何度も出てきた"動物農場"、本作での主人公の取材が誕生のきっかけに。動物農場が三鷹の森ジブリ美術館で配給された際には、宮崎駿が「今、豚は太っていない。」と表現したインタビューがあり、それを作品を観る(読む)前に読んでしまった。近いうちに、動物農場にも触れたいと思った。
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