三郎丸

赤い闇 スターリンの冷たい大地での三郎丸のレビュー・感想・評価

3.0
【人は飢えたら木の皮食べます】

イギリス人ジャーナリストのガレス・ジョーンズが1933年のソ連:ウクライナ取材でソビエト計画経済の真実を、民主化前のポーランドの情報抑圧社会の頃から制作活動をしていたアグニェシュカ・ホランドが管理社会の皮膚感覚まで忠実に映像化。
思想がどーのこーのを問わず、権力は情報を都合よく操作するという事実を突きつけてくるぞ!ということを作品を通し訴えます。

1933年、ヒトラーに独占取材したことがイギリス人記者ガレス・ジョーンズ(ジェームズ・ノートン)は、大不況の資本主義諸国に比べ、驚異的な経済発展をしているソ連を取材するため、モスクワで取材をしているポールに連絡を取るが、電話は途中で途絶、その後ポールは死体で発見。
外交ルートを詐称して現地に飛んだ主人公は、現地のニューヨーク・タイムズのモスクワ支局長と彼の助手とコンタクトを取るが、ポールの生前最後の行動についてはっきりコメントしない。色々あってポールがウクライナへの取材に出かけようとして殺害されたことを知った主人公は、工場の現地視察と偽っての移動中に途中下車して、ウクライナに降り立つが…

ホロドモールと呼ばれる20世紀有数の人為的災難&大規模飢餓。
そして、飢餓の解放と万民の平等を目指した改革が、新しい権力による搾取と飢餓をもたらしてゆく状況、権力による報道機関の骨抜き状態、資本主義や共産主義ってどうなのよ!?
正直地味なストーリー展開ではありましたが、
【人と政治の醜い本質】
をまざまざと見せつけます。
モスクワでの誰がどこで監視しているか分からない疑心暗鬼的な緊張感から現地に入ってからの絶望的なまでの飢餓を見つめる主人公と手持ちカメラの【ブレ】が容赦なく絶望感を煽ります…

この作品にあるような報道抑制、ロシアとウクライナの戦争もですが、人々への反響を恐れ、きちんと情報が伝わってきているのか?
考えさせられる作品ではありましたが、とにかく地味なのでオススメは出来ないですかね…

ほんのりオマケ
今回の戦争が始まってロシア人とチラりコミュニケーションする機会があったのですが、
戦争前のロシア人の印象は…
【基本無表情&無愛想】
今のロシア人は、
【ムリめな笑顔&丁寧な挨拶】
そんなことで誤魔化されるか!

ウクライナの方々も来日してますが、1日でも早く戦争が終戦し、安全安心に暮らせるようになればと心から願います。
三郎丸

三郎丸