ちゅう

赤い闇 スターリンの冷たい大地でのちゅうのレビュー・感想・評価

3.6
ジャーナリズムがやるべきことは、客観的で検証可能な事実を伝えることだとアグニエシュカホランド監督は言う。
どんな信念があろうと事実をねじ曲げる人はジャーナリストとは呼べない、と僕も思う。


ホロドモールと呼ばれる、戦間期にウクライナで起きた人工的な大飢餓。
スターリンが計画経済の名のもとに引き起こしたと言われていて、何百万人もの人々が犠牲になったそうだ。
今では多くの国でジョノサイド(大量虐殺)だと認定されている。
その実情を世界に訴えた一人のジャーナリストの物語。


非常に硬派な映画だった。
重い題材でショッキングなシーンもあるからしんどさを感じたものの、長くは感じなかったのでよくできているのだと思う。

結局、共産主義という強い信念が生んだ大惨事であり、それがたくさんの人の判断を誤らせた。
信念というものの怖さを感じずにはいられなかった。

だからこそ事実を伝えることの重要性が身に染みる。
一部の同じ信念を持った人々の間で情報が止まってしまうから間違いを正す機会が生まれないのだと思った。

こういうことって、インターネットが普及した現代にはおこらないだろうと思いたいけれど、きっといつかまた起こるような気がする。
それが日本でない保証はどこにもない。


ポストトゥルースと言われ、真実よりも自分の求める幻想を信じる時代に、ジャーナリズムとは何かと問いかけている。
万人に受ける映画とは言い難いけど、世界ではこういうことが起こったことがあっていつの日か自分にも起こるかもしれないと戦慄するのもたまには必要だと思う。
ちゅう

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