アキラナウェイ

ニューヨーク 親切なロシア料理店のアキラナウェイのレビュー・感想・評価

4.0
原題は"The Kindness of Strangers"。

ニューヨークの厳しい寒さの中で、見知らぬ人の優しさが身に沁みる。

マンハッタンで創業100年を超える老舗ロシア料理店に、夫のDVから子供達を守る為に家を飛び出してきたクララ(ゾーイ・カザン)が、寒さをしのぐ場所を求めてやって来る。ピアノの下で寄り添い合って眠る親子を見つけたマネージャーのマーク(タハール・ラヒム)は、彼らを匿う事にするが—— 。

この映画、好きだなぁ。

訳ありなキャラクター達が、不器用ながらも優しく手を差し伸べて繋がっていく群像劇。

「ルビー・スパークス」で堪らなくキュートだったゾーイ・カザンは、別人かと見紛う程に、表情の端々に"陰り"を宿す。パーティー会場に忍び込み、大皿からクッキーを鞄に流し込んで、子供達のお腹を満たそうとする不憫な姿に胸が締め付けられる。

経営が傾いているロシア料理店のマネージャーにスカウトされたマークを演じるタハール・ラヒムとの恋愛描写は、抑えたトーンで展開されるのも好感が持てる。

ロシア人じゃないのに、ロシア語訛りに拘るオーナー役にビル・ナイ。

救急看護の激務をこなしながらも、「赦しの会」というセラピーを開き、自分の事は後回しで疲弊していく看護師のアリス役にアンドレア・ライズボロー。

絶望的な不器用さで、行く先々の仕事をクビになるジェフ役にケイレブ・ランドリー・ジョーンズ。

「赦しの会」に参加する、マークの友人であり、弁護士のジョン役にジェイ・バルチェル。

知名度はなくても、個人的には注目株の俳優ばかりで固められたキャスティングは嬉しい限り。

仕事をクビになった腹いせに、ジェフが窓から放り投げた椅子が、巡り巡ってジョンの弁護士事務所に辿り着く描写が好き。それは、他人同士がひしめき合って暮らすニューヨークで、実は人と人とが繋がっている事のメタファー。

DV夫の本職が警察官とかマジ怖い。
逃げても逃げても追ってくる。

しっかりしてよ!
ママ、あきらめないで。

息子くんの言葉が涙を誘う。

ただ生きていくのがこんなにも困難な世の中で、皆んな孤独で独りぼっち。そんな他人同士が一同に会する終盤のシーンに胸がほかほか温まる。

劇中、ロシア料理店のバンドが演奏する"House of the Rising Sun"という曲が好き。

「永遠に僕のもの」では、"La casa del Sol naciente"というタイトルでスペイン語で歌われていた挿入歌。

ジェレミー・レナー、八代亜紀も
カバーしているって知って驚き。