えいがうるふ

屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカのえいがうるふのレビュー・感想・評価

3.7
いかにもホラーっぽい邦題にこの猛暑が少しは涼しく感じられるかもとトライしてみたものの、むしろ蒸発しない汗がべっとり身体にまとわり付くような印象で不快指数が上がるばかりの映像が続く。「ボーダー 二つの世界」を思い出す見事な醜形特殊メイクも凄まじいが、とにかくどの場面もfilthy!!の一言。私が見たWOWOWではいちいちボカシもあり目を背けたくなるようなゴア描写そのものは映らないものの、トレインスポッティングの例のシーンをやや薄めてずっと流しているような、終始画面から臭気が漂ってくるような絵面。おえー。

主人公が行きずりの娼婦を殺害しまくるという点だけが共通するがその他の全ての面でアメリカン・サイコの絵面の対極とでも言おうか。何がおぞましいって途中で妙にアットホームな劇伴でこの主人公が地獄のような部屋でごく普通の日常生活を送る様子が描かれること。悪趣味だわぁ。

ところが、終始吐き気を催すような不快な絵面と展開でありながら、終盤のハラハラからのラストシーンまでのシークエンスが妙にクールで爽快なのである。おかげで終わりよければ全て良しとまでは言わないが、その意外な後味の良さで面白いものを見たような気になってしまうあたりが絶妙。と、ホッとしたところで、やたらのどかなエンディングテーマと共に事件のドキュメント映像をしれっと流し、はいこれ、ガッツリ実話でしたー!と改めて思い知らせるというダメ押しの悪趣味さよ。変態だなぁこの監督‥(褒めてる)