dita

屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカのditaのレビュー・感想・評価

4.0
@ シネ・リーブル梅田   

本年度「臭い(におい)映画」大賞候補筆頭。臭いを想像できる映画はいい映画という持論があるけどこれはキツい。終わって吸ったタバコが超不味かった。売店で「おいしい空気」を売ってたら1000円出しても買いたかった。

登場人物総じて、だらしがない。男も女も歩き方はおかしいし、体形は未来のわたしだし(ダイエットしよう…)、短絡的だ。SEXに対する欲求も然り。てか勃たない男に対してあのことばはナシやろ…で、お前は何を入れとるねん。

閑話休題。

たくさんのフィクション映画やドキュメンタリー、小説やルポルタージュに触れて、殺人という罪に対する背景と殺人という行為そのものの因果関係にどう気持ちを持っていけばいいのか、わたしが殺人者にならないためにはどうすればいいのかずっと悩んでいたけれど、この映画でひとつ区切りがついた気がする。

殺人という行為は個人の衝動に帰結する。
いかなる理由があれど死は死であり、殺人は殺人である。

ホンカの過去に殆ど触れない潔さ。親に愛されなかった、暴力を振るわれた、離婚歴その他諸々(後で調べた)に加え、社会の底辺で見向きもされず気付いてももらえない男の衝動は、出自でも社会に対する怒りでもなく、自身の惨めさに気付いた瞬間におとずれる。

正直に言って冗長な二時間だと思う。でも、目が離せなかった。同じ列に座っていたお洒落な男性が何度も「ふふっ…」と笑っている横でわたしはずっと泣きそうになっていた。ホンカの気持ちも、殺された女性たちの行動も手に取るようにわかってしまった。ダークヒーローでも悪のカリスマでもないこの殺人者にこびりつく腐臭はわたしの中にも間違いなく存在する。帰宅してすぐ風呂場で身体を洗った。臭いは取れない。
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