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ペトルーニャに祝福をのchiakihayashiのレビュー・感想・評価

ペトルーニャに祝福を(2019年製作の映画)
3.7
@試写
 繁栄というものを知らないままにすっかりサビれてしまったような地方都市で仁王立ちをしているヒロインの姿が忘れられない(試写を見たのはもう1年も前か。コロナで公開が延期になっていた)。

 ペトルーニャは体型太め、すでに32歳、大卒、しかも優秀な成績で。にもかかわらずウェイトレスくらいしか職がない。ふてくされてベッドから出てこない彼女に苛立つ母親に追い立てられるように就職の面接に行けばセクハラに遭う。

 その帰り道、祭に遭遇した彼女は、思わず川に飛び込んで、司祭が投げた十字架を拾っていた。その年の幸福を約束する十字架で、多くの半裸の男たちが競っていたにもかかわらず。女性には祭への参加が禁じられていたにもかかわらず。

 ペトルーニャは警察に連行されることになる。大学で歴史学を専攻したというペトルーニャに警察署長は「アレキサンダー大王にあこがれたのか?」。「自国の歴史には興味がないわ。興味があるのは中国革命よ。共産主義と民主主義の融合に関心があるの」。首都のテレビ局から取材に来ていた女性リポーター(バツイチで子持ちの40代)が「なぜ女性だとダメなんですか」と詰め寄るときの司祭の困り顔がリアル。−−−−とストーリーの展開は〝異文化〟感がありながらも、そこかしこにスパイシーな〝あるある〟感満載。

 ペトルーニャは自分でも言うように、野生のケダモノ的なカンに従って自分なりの幸福を求めようとした。それはとどのつまりは自分自身であろうとしていただけなのだ。そこにおいて実にふてぶてしいペトルーニャに祝福を!
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