みちみつる

イエスタデイのみちみつるのネタバレレビュー・内容・結末

イエスタデイ(2019年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

「昨日まで世界中の誰もが知っていたBeatles。今日、僕以外の誰も知らない。」がコンセプトのファンタジー・ロマンティックコメディ。
大好きなBeatlesの曲が終始聴けてとても楽しかったし、改めてBeatlesの偉大さに気付かされた。
『ボヘミアン・ラプソディ』のような伝記映画とは違ったアプローチでBeatlesへのリスペクトが描かれていた。
しかし内容としてはロマコメ部分が半分以上を占めており、摩訶不思議な事象に対する説明は全く無いので、そのあたりを追及するとツッコミどころや不満も多々ある。そこまで深く考えずにただただBeatlesの名曲とイギリスらしいロマコメを堪能するのが正しい楽しみ方なのだろう。

キャスト…主人公はヒメーシュ・パテルという俳優さん。歌声が美しくてとても良かった。序盤、“YESTERDAY”を歌うシーンでは思わず涙がこぼれた。中盤、“HELP”を熱唱するシーンでは、その時の主人公の心情を爆発させていてとても印象的。Beatlesの楽曲を利用し富と名声を得ることに罪悪感を抱き葛藤する姿、ヒロインとの関係性に悩むヘタレ青年の姿を見事に演じていた。
ヒロインはリリー・ジェームズ。見た目はもちろん、仕草や話し方など、愛嬌があってとっても可愛らしい。目の保養。主人公を献身的に支える姿が良い。こんな可愛い子に一途に愛されるとは、なんて羨ましいんだ、主人公…

演出…この映画の演出やカメラワークはかなり自分好みだった。特にこの物語の発端である“停電”のシーン。“A Day In The Life”のフレーズが効果的に使われており演出・音楽の使い方が上手いな、と感じた。

脚本…恋愛やコメディパートはやはり数々のロマコメ作品を手がけた脚本家だけあって、クスッと笑えるシーンあり、切ない心のすれ違いあり、ラストは愛の大告白あり、と予想できる展開も多かったが楽しめた。特に“Beatlesが存在しないことで起こる様々な弊害”が面白おかしく描かれている。ただ、当て馬にされたヒロインの彼氏くんは可哀想だったな…無理にくっつける必要があったのだろうか。
そして肝心の“自分だけがBeatlesを知っていたら…”というコンセプト。これはもっと深く掘り下げることもできたのでは?と感じる。Beatlesが及ぼした影響は音楽界だけでなく、ファッション界、当時のカウンター・カルチャーなど多岐にわたるので、Beatlesが存在しないとそもそも歴史自体が大きく変わっていてもおかしくない気がする。また肝心の音楽についても、Beatlesのどこがどう凄いのかをもっと掘り下げてほしかった。ロマコメパートとの両立もあり2時間でまとめるにはそこまで話を複雑にしないほうが良いのだろうが少し残念ではあった。
ただ、Beatlesが存在しない代わりに暗殺された過去も無くなりジョン・レノンが存命だったという展開にはグッときた。また彼の言葉がきっかけで主人公がラストの行動への決心をするのも良い。しかしジョンが存在するということはポール、リンゴ、ジョージももちろん存在するわけで、それなのにBeatlesが誕生しなかったのは何故なんだろう…ジョンとポールが出会わないという歴史的変革があったのか?とツッコミどころが残ったせいで残念ながら泣くほどは感動できなかった…
また自分としてはBeatles世代ではなく、主人公と同世代(1990年代生まれ)なので、主人公がOasisの曲を演奏したエピソードは琴線にふれるものがあった。OasisもBeatlesから大きな影響を受けたバンドのひとつであり、我々の世代はOasisからBeatlesを知った人も多かったんじゃないかと思う。もちろん、Beatlesが存在しないのでOasisも存在しない。Beatlesが後世に残した影響力は計り知れないな、と改めて感じた。
そしてもっと若い世代はもしかしたらBeatlesを知らない子も多いのかもしれない…そう考えると、この映画のコンセプトも非現実的なファンタジーと馬鹿にすることはできないなぁ。

【リピート有無】
ストーリーはそこそこだったが音楽と演出が最高。また観たい。