とし

イエスタデイのとしのレビュー・感想・評価

イエスタデイ(2019年製作の映画)
4.3
まんまとビートルズを生まれて初めて聴いた時の優しいしびれが、胸から頭の方へせり上がってきた。彼らの曲って、人をこんな表情にさせる。魔法のように時を止めてしまう。もしもある日突然この世からビートルズが消えてしまったら?という稀代のジョークみたいな問いに、私たちは"もう昨日には戻れない"という不可逆な真理と向き合っている。この映画の最高にクールな魔法使いの1人は、紛れもなく主演のパテル。この男、そこはかとなく漂う万年インディーズ感と、ギター持たせた時のギャップがイイ。歌が上手い。声もいい。たとえ銃を掴まされても、禁断の毒杯飲まされても、なんやかんや悪には染まりきれない顔してる。世紀の大事件が起こりながら、このえも言われぬ安心感はなんだろうと思っていたけど、これラブコメだった。そうだった。意外にも大魔神ダニー・ボイルとラブでコメな相性は抜群だ。誰もが知るビートルズは、往年の名曲尽くし。エドをエドとしてカメオ出演さすサービス精神。音楽や詩の愛し方が上手い監督にかかれば刹那的な愛と笑いに終わらず、ちょいと普遍的なロマンに変わる。男は女の難しさを理解する必要なんてなく、ただただ女を愛すれば良い。ジョンの微笑みが伝えるのは、そんなことなのかも。

あとは、健気なリリー・ジェームズが可愛かった。髪も服も可愛かった。女らしさを見せたリリー・ジェームズが可愛かった。笑顔も泣きっ面も、生徒にいじられた照れ隠しのリリー・ジェームズが可愛かった。
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