ビートルズが消えた世界で、唯一その曲を知るシンガーソングライターの活躍を描いたラブコメ
全然世代じゃないけど『Abbey Road』をはじめて聞いた中学時代の衝撃が忘れられなくて、全213曲聴いたあとライブ音源や未発表の曲、違うバージョン、4人のソロ曲も聴いて、ポールのライブに行くくらいにはビートルズは好きです。
そういうわけで自分にとってはビートルズが消えたら・・・という設定だけでもう面白い。
セリフの中にビートルズの曲名や歌詞が隠れていたり、ビートルズ関係のものが消えていたり(オアシスとか、ジョン・レノン空港とか)、ビートルズ来日会見の壁を模したものがあったりなど、マニアに嬉しい遊び心はさすがダニー・ボイル監督。そして、マニアのみならず楽しめるシナリオはさすがリチャード・カーティス。
ビートルズの曲を発表してのし上がれば上がるほど、実力でないことの葛藤と、好きな人のそばに居られない地獄の苦しみを味わう主人公。才能はないし、間違ったほうばかり選択してしまう「負け犬」なんだけど、彼のそういうところに共鳴してしまう。
天才が努力で成功する映画も好きだけど、凡才でも盗作しないでも人生の勝ち組になれる方法を教えてくれるこういう映画のほうが好きなんだよなあ。
そして、それを教えてくれる後半のサプライズには本気で泣きそうになった。ファンには来るものがあるはず。ずるいわー。
ビートルズのある世界を抱きしめたくなる一作。
【余談】
ビートルズがいなかったらどうなってただろうか。
まず、スマホのapple社は違う社名になっていたし、ヘビメタやサイケの到来は遅れていたし、武道館ライブもなかった。エルトン・ジョンの「ジョン」は違う名前になっていたし、MTVもない。長髪の若者が偉そうな口を叩いてもいい免罪符にもならなかったし、ひいてはヒッピーに代表するカウンターカルチャーも興らなかったかも知れない。「宗教も国境もない」という『イマジン』もなかった。
そんな世界怖すぎるわ。
そんな世界は嫌だという人は『僕はビートルズ』というタイムスリップものの似た内容のマンガがあるので一読なさってはいかがでしょうか。