なべ

イエスタデイのなべのレビュー・感想・評価

イエスタデイ(2019年製作の映画)
4.0
なんてチャーミングな映画!
どうして劇場で観なかったんだろう。
いや、それはわかってる。
なぜか突然過去に戻ったり、どこかの誰かと中身が入れ替わったりする、そういう「ずるい映画」に飽きてたからだ。ビートルズがいない世界…そんなIfがなきゃストーリーが書けないなら映画なんてやめちまえ!と思っていた。

前言撤回。
おもしろかった!

ヒメーシュ・パテルなんて役者、全然知らなかったよ。彼が演じるジャックがまた絶妙にイケてなくて。顔はもちろん、ファッションもダサダサ。
彼が歌うサマーソングに至っては、駄作を通り越して、絶望的にへっぽこ。こんなクソ楽曲をリアリティのあるレベルで作るのは逆に難しいのではないかと余計なことを思ったり。
ところが彼がイエスタデイの弾き語りを始めた途端息を飲んだ。この世で初めて演奏されるイエスタデイの素晴らしいこと(ちゃんと初めて感が出てた)!撮影時のライブ演奏らしい。
当然サマーソングとは比べるまでもなく、メロディが、歌詞がじわぁっとからだに浸透してくるのがわかる。目がうるうるする。高校の時、担任とビートルズの偉大さについて言い争いになったのを思い出したわ。
そんな彼の(ビートルズ作の)楽曲がエド・シーランに見出されて、ツアーの前座に抜擢されて…
エド・シーランが出てるのは知ってたけど、こんなにがっつり出てるとは。しかもちゃんと演技してるし。
即興対決でジャックがザ・ロング・アンド・ワインディング・ロードを歌うシーンでは鳥肌が立ったわ。そして泣いた。役者が役を演じて歌うというとはこういうことなんだな。この映画のおかげで、この世で初めてあの曲を聴くショックを味わえた。ほんとスペシャルな体験だった。
エド・シーランが敗北感とみじめさを感じるところもグッときた。よくこんなシーンを演じてくれたよなあ。
ビートルズのいない世界をワクワクしながら観てたけど、途中からこれどうやって終わるんだ?とすごく心配になってきた。ジャックが富と名声を手に入れてみたいなラストはありえないとは思っていたけど、なるほどそうきたか。
うん、納得できる。
チャーミングな作品だと思ったのはこのエンディングだったからかも。
映画ファンとしても、ビートルズファンとしても観て良かった。

特典映像にあった削除シーンの「サムシング」。自分にあてた歌だとわかるリリー・ジェームズの表情にまた泣く。

そうそう!
ビートルズを知らない若い世代のために、ビートルズの楽曲とスネークマンショーを絡めたミックスをSoundCloudにアップしてたのを思い出した。ポピュラー認定されたコンテンツなのでよかったらどうぞ。
https://soundcloud.com/kuniakin/the-beatles-with-snakeman-show
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