モミジ

イエスタデイのモミジのレビュー・感想・評価

イエスタデイ(2019年製作の映画)
2.0
「とんでもないメタ映画」

というのも、本作でビートルズの曲が絶賛されてる理由が「だってビートルズだから」で終始されていて、それ以外の理由が一切ないんですよね

「ビートルズのいない世界でなぜビートルズが評価されたのか」という点において劇中の描写だと全く説得力がないように見えました

というか、そもそもビートルズである必要がなくない?マジで


↓ここから批評という名の愚痴
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はじめに、ビートルズの曲が2019年に初めてリリースされて「最高の名曲だ!」と絶賛されるのが不自然です。
なぜかというと、現実世界の私たちは少なからず『あのビートルズが作った名曲』という先入観を持って曲を聴いているわけです。名曲という情報が一人歩きしてるから、ビートルズを知っている人、知らない人を問わず、すんなり「これは名曲だ」と受け入れられます。
しかし、その先入観が無い世界におけるビートルズの曲は、言ってしまえばタダの古臭い曲になってしまうわけです。「古いけど良い曲だね」という感想が関の山でしょう。
劇中の登場人物はみんな理想的なリアクションをしてくれますが、音楽というものは基本的にその時期に流行っているジャンルに大衆が食いつくから流行るものです。急に1960sに作られたロックをリリースしても一部の物好き以外は食いつきません。
そもそもビートルズが人気になった要因は、楽曲的な評価だけでなく、初めてロックンロールではなくロックを演奏した革新的なアーティストだということ。今までとは打って変わる音楽を立て続けにリリースし世界に衝撃を与えたこと。今までのアーティストとは一線を画するビジュアル・ファッション性があったこと。………と、時代背景やカリスマ性が大ヒットの背景にあったわけです。
そういったものが一切存在しないのにも関わらず、劇中人物は聴いた瞬間に即絶賛。

ビートルズが存在しない世界なのに、現実世界と同等の評価がなされるというパラドックスが発生するわけです。

これは不自然で不気味でご都合極まりありません。
そもそもローリングストーンズがいる世界で今更ビートルズが現れても現実と同じように評価されるわけありません。グレタヴァンフリードみたいに懐かしいサウンドだねーと反応されてグラミーにノミネートされたら良い方じゃないですか。
また、オアシスをはじめとして、劇中でビートルズの影響を強く受けている存在が消失している描写があります。そして、それと同時にコールドプレイのfix youが劇中で語られていました。コールドプレイの源流であるレディオヘッドを遡るとビートルズの影響があるわけで……ビートルズの影響がものすごく曖昧に定義されていませんか?ビートルズがいなくなってコークやシガレット等の言葉、ハリーポッターが消えるのに…コールドプレイは消えないのかと、かなりの違和感を覚えました(『ビートルズの影響を受けているから消えた』のではなく、『世界から消えたものの一つがビートルズ』という描写なのかもしれませんが、だとしたら少し説明不足ですね)。
ビートルズの影響は音楽面だけではなくて、ファッションの流行やビートルズの影響を受けたバンドによるアナーキーの誕生といった社会性にも深く踏み込んでいるので、そういった面の描写が無く『ただビートルズがいないだけの世界』になっていたのが残念です。ビートルズが存在しない世界を仮定するのは難しいでしょうが、エドシーランやジェイムズコーデンをキャスティングするほど予算に余裕があるならしっかりとシミュレーションしてほしい所です。
最後に、お爺ちゃんになった某Jさん。アレいります?
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本作を総評すると「ビートルズというコンテンツを利用したファンタジー恋愛映画」となり、そこにはあまりリスペクトは無かったのかもしれません

ここまで言っておいてなんですが内容は普遍的なサクセスストーリーでそれなりに面白かったです
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