じょの

スティル・クレイジーのじょののネタバレレビュー・内容・結末

スティル・クレイジー(1998年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

この手の話だと「昔かっこよかったバンドが年を取って格好わるくなったけど、でもその格好わるさがかっこいい」的なことに仕立て上げられるわけだけど、『スティル・クレイジー』は、そこに重点を置いていない。若いときも老いた後も、どちらもちゃんとかっこよく描いてあるところに好感が持てる。

登場人物は、いかにもバンドにいそうなキャラクターたち。
ボーカルは、自信家かと思えば、突然落ち込んだりして、“いかにも”なロックスター。
頑固一徹のベーシストに、明るいドラムス(なんでドラムってこうなんだろうw)
後任の若いギタリスト。ルークを演じたハンス・マシソンは実際にギターが弾けるので、演奏シーンでは張り切ってました。

大したネタバレじゃないから言っちゃうけど、死んだとされていたブライアンは、実は生きていた。
後半に出てくるんだけど、これがめっぽうかっこいい。
出番はわずかだが、素晴らしいギタリストであるという設定にふさわしく、強烈なインパクトを残している。
演じているのは俳優ではなく、映画監督のブルース・ロビンソン。『ウィズネイルと僕』や『キリング・フィールド』の監督です。

本作はイギリス映画だけあって、アメリカのロックムービーと比べると、全体的に地味な印象。しかし私はそれが気に入った。
安易に恋愛モノとしてハッピーエンドにしたりはせず、あくまでバンド主体で描いていく。
結果的に地味になってはいるけど、ロックバンドがよく書けていると思う。(「ロックをうまく書いている」とは言えません。なぜなら、ロックを芝居(映画)で見せるのはとっても難しいので……)

日本未公開の地味な映画『スティル・クレイジー』が、なぜこんなにも胸熱かって、それは私がロックバンドに並々ならぬ思い入れがあるからです。そういうバックボーンがあったからこそ、この映画で感動することができた。
『スティル・クレイジー』は、ガンズ&ローゼスであり、メタリカであり、ニルヴァーナであり、モトリー・クルーであり……以下略。
だから本作で、バンドが再結成してステージに立ったとき、私は「嬉しい」と感じたのだ。まるでこの架空のバンドを昔から知っているかのように、ステージで微笑みあう彼らを見て「よかったな」と思った。
つまり、かつて危機を迎えた(もしくは今も危機にある)あまたのバンドの面影を、作中のバンドに見ているわけだ。そりゃ感動するわ。

『スティル・クレイジー』は、ロックとか好きな人にオススメで、さらに言えば何らかのバンドに強く思い入れしているような人にオススメの作品です。
じょの

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