SWD

サイダーのように言葉が湧き上がるのSWDのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

SNS時代における青春映画の新たな傑作!
舞台をほぼ田舎の大型商業施設に絞ったミニマムな作りながら、SNSによる世界の広がりや繋がりも巧みに描いていて、そうそう俺は『竜とそばかすの姫』でこういうのを観たかったんだよ!とうなずくばかり。(奇しくもヒロインが身体的なコンプレックスを持っている点も一致している)
気になる人からのフォローやいいねにいちいちドキドキしたり、引っ越しで祭りに参加できないチェリーに向けて生配信で映像を繋いだり…。

そしてビビッドな色彩で描かれる日常の何気ない感情を丁寧に拾い上げ紡いでいく物語は、単なる恋愛映画の枠を越え創作賛歌の様相を呈していく。

序盤の「俳句は文字の芸術なんだから言葉にしなくても…」「言葉にしてこそ伝わる句もあるんじゃないかしら」の会話。チェリーの言い分も分かるだけに、直接伝えること、ありのまま伝えることだけを肯定する話になったら嫌だなあと思いつつ観ていると、後半でしっかりと俳句が文字の芸術であることを活かした演出があり納得しかなかった。

2人の恋愛と並行して描かれる、デイサービスの老人の話も強い印象を残す。
レコードという「忘れられようとしている文化」をSNSでの映像や文字といった形で残すことで次世代に繋いでいく。これはまさにアニメーションや映画の意義そのものではないだろうか。
カルチャーと記憶が強い結びつきを持っているという描き方含め、テーマと映像的快楽が見事に合致している。

まさしく劇中に出てくるような田舎のイオンモールでこの映画を観た僕は謎の没入感に浸ってしまい、見事に泣かされてしまった…。
杉咲花さん演じるヒロインが稀に見るかわいさなのでそれだけで観る価値があるほどだし、幾度の公開延期を経て、奇跡的に今の状況と劇中の舞台がマッチしているのも何か運命的なものを感じざるを得ない。
夏の匂いが残っているうちに、騙されたと思って観るべき快作!

補足と与太話

・個人的にマスクをした女子が性癖なので、冒頭のスマイルとチェリーがぶつかった後、床に着けていたマスクが無造作に落ちてるカットに妙に興奮してしまった…。
あと口を隠しながらご飯食べてるところとか、みんなに隠れてマスク外して水道の水を飲むところとか…。
・スマイルが「小さい頃から」「家族ぐるみで」配信活動をしている辺りに時代を感じる
・キスシーンすらないピュアな恋愛映画…と思いきやおじいちゃんの回想シーンでちゃんと描いてる周到さ!
・レコード→時計が象徴的。文化と時の流れ。
・イシグロキョウヘイ監督自身による解説YouTubeチャンネル(https://youtube.com/channel/UCIhfdxWGaK9SDyzS_dLJogg)があることにびっくり。後でじっくり観ます。