JunichiOoya

ニッポニアニッポン フクシマ狂詩曲のJunichiOoyaのレビュー・感想・評価

5.0
これから年末までは『お嬢ちゃん』『アジアの純真』『解放区』『典座』とまだまだ期待作がずらりとひかえている。春には『岬の兄妹』『王国(あるいはその家について)』なんかもあって、今年も私には大豊作の一年だった。さりながら私(ワタクシ)、今回微塵の迷いもなく、この時点で早々に『ニッポニアニッポン フクシマ狂詩曲』を今年のマイベストワンに決定させていただきます。

才谷遼さんといえば『セシウムと少女』だろうし、永島慎二も暮らした地での「ラピュタ阿佐ヶ谷」でしょう。加えて最近は同じ大分人ということもあってか、京都の名物写真家兼八文字屋主人の甲斐扶佐義さんも絶賛称揚中。(ローカル限定の話題かもしれませんね、すみません)でもでもやっぱり私には、岡本喜八の直系継承者としての才谷遼さんが何より一番。

今回の映画は間違いなく『肉弾』の発展継承型作品だと思う。残念ながら大谷直子さん(園子温『希望の国』でフクシマに暮らしておられた『肉弾』のヒロイン!)の参加はなかったけれど、ガイコツと「共演」する寺田農さんを見てひたすら感動しました。

宝田明、山根初男、柳澤慎一といったレジェンドたちは言うに及ばず、喜八組の田村奈巳さんや、『独立愚連隊』荒木「記者」のご子息、果てはフジ・アキコ隊員まで! こうしたキャストの結集があれば、一方では阿佐ヶ谷パワーの強烈なアニメーター連の噴出。

役者たちの、クリエイターたちの、各々の見せ場を連ねた「オムニバス」ともいえる大作なのだけれど、でも私は、かつて各地で連日開催されたの「集会」で両手のハンドマイクを握った登壇者が入れ代わり立ち代わり発言する「アッピール」が蘇り、そしてそれに「異議なし!」「断固支持!」で呼応する参加者=映画館の観客、そんな映画としてみました。

核兵器だって原発だって同じじゃあないか! という大宴会シーンのカタルシスは間違いなく2019年最大の映画的収穫でした。
編集にはさぞご苦労があったかと思います。こういう「力技」映画がとてもとても好きです。

この映画にかかわられた皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです。
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