10円様

ザ・テキサス・レンジャーズ​の10円様のレビュー・感想・評価

3.7
ボニー&クライドと言えばアメリカ近代の犯罪史上最も有名なギャングではないだろうか。彼等の犯罪の残虐性、逃亡の巧妙さに加え、小柄で容姿端麗な外見や気さくな性格、また世界大恐慌の風土の上で銀行や金持ちしか犯行の標的にしない義賊性が大衆を味方につけた。
彼等を題材にした映画と言えばまず出てくるのがニューシネマの皮切りと言われる「俺たちに明日はない」だろう。その他亜流作品やボニーを単独主演にした「鉛の弾丸をぶちかませ」というものまである。70年代初頭に求められたアンチヒーロー。確かにこれはかっこいい。

しかし彼らを法の正義のもとで描かれた映画を観た事がなかった。ボニー&クライドはアメリカの狂犬とまで言われた連邦政府の悪であった。法の整備が現代より甘かった時代にせよ。何千人もの警官とFBIを動員しても逮捕できない犯罪者。そんな彼らの壮絶な最期の裏には2人の元テキサスレンジャーがいた。これはアメリカの巨悪を追い詰めた正義の男達の話。良い拾いものをした素晴らしい作品である。

この映画の特徴はボニー&クライドの全貌を最期まで見せないミステリアスな作りになっている。警察捜査の観点で追い詰めて行くのだ。時に外法を使ったり、保安官にカマをかけたり、独自の捜査で州警察やFBIと対立しながらも真相に迫っていく展開は面白い。
そしてこの2人をケビンコスナーとウディハレルソンが演じているのもよい。老いてなお正義の灯火をもつ男と、その相棒をどこまでも信じる明るい男。初老のくたびれ感がまた何とも言えない哀愁を漂わせている。この映画に派手なアクションシーンはない。ただただ過去の過ちやトラウマに悩みながらもバロウギャング壊滅に立ち向かう2人の姿のみに焦点を絞り、ジョンリーハンコックは2時間の中で丁寧に描写してくれた。
犯罪は悪である、その信念を貫く姿こそ現代のヒーローに求められるものだと思う。
ちなみにテキサスレンジャーが何なのかを知りたければ、「勇気ある追跡」とそれをリメイクした「トゥリーグリッド」を拝見してみるとよいだろう。
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