カツマ

ザ・テキサス・レンジャーズ​のカツマのレビュー・感想・評価

3.8
子供の頃に見た『俺たちに明日はない』のラストシーンは未だに脳裏に焼き付いて離れない。そんな美的に脚色され続けるボニーとクライドというオモテ面を裏返せば、ロートルレンジャーズたちの朴訥とした追跡劇がもう一つの正義を告げていた。美化された犯罪と美化されなかった追跡者たち。だが、もちろん美化されるべきだったのは追跡者達の方だったはず。これはあのボニーとクライドから『明日』を奪った男たちの物語だ。

ケビン・コスナー、ウディ・ハレルソン、という二大名俳優のタッグが劇場公開ではなく、Netflix映画として観れる時代が到来している。2時間越えのボリュームも、州をまたいでの果てなき追跡劇というスケール感も、小さな画面では勿体ないほどのクオリティだったのは間違いないだろう。実話ベースであることを強く意識せるエンドロールからは、歴史の影に隠れがちだったレンジャーズたちへのリスペクトを十分に感じ取ることができた。

〜あらすじ〜

ときは1934年、舞台はテキサス。世は世界恐慌の波に呑まれ、不況の嵐が到来。そんな中、銀行など金満な標的からの強盗を繰り返していたボニーとクライドは、いつしか大衆から英雄視されるようになっていた。だが、その裏で二人は何人もの警官を殺害してきた非道な殺人者であり、警察は二人を始末するために血眼になっていた。
その流れの中で白羽の矢が立ったのが、すでに引退していた伝説のテキサスレンジャーズ、フランク・ハマー。久々に現役に戻ってきた凄腕のフランクは、元相棒のメイニーと合流し、長年の勘を頼りにボニーとクライドの足取りを追うことになる。しかし、追跡する先ではまたもや警察官の死体が転がり、犯罪史に残る事件は予断を許さぬ段階へと突入しようとしていた・・。

〜見どころと感想〜

大幅に脚色されることの多いボニーとクライド事件だが、この作品は二人の残虐性と猟奇性を他の映画化作品よりも強く描いているため、ラストの衝撃はだいぶ和らいでいたように思う。車の車種や犯人に引導を渡す描写まで実話ベースが徹底されている硬派な作品で、その追跡劇の強引さと粘り強さに焦点を当てることで、二人のアウトローな魅力を更に引き立てることができていた。

寡黙なケビン・コスナーとコミカルなウディ・ハレルソンというバディは思いのほか相性が良く、ちょっとした掛け合いが生死の奪い合いをしているという意識を散らしてくれていた。
同じ物語でも視点が変われば全てが変わる。正義も価値観も真逆になってしまうことだってある。この物語は真っ当な正義を提示していたはずだった。それは必ずしも晴天が似合うわけではないクライマックスだが、レンジャーズたちにはお似合いのラストだったのだろう。

〜あとがき〜

昔、『俺たちに明日はない』を観たときにはあまりに現実離れしていたので、完全なるフィクションだと思っていました(実話ベースだと知ったのは後の話)。が、レンジャーズ側から見たこちらの作品を鑑賞してみると、事件の全体像が俯瞰して見れるため、現実的な犯罪者としてボニーとクライドが登場してきます。

とはいえあくまでレンジャーズが主役なので、犯罪者たちはラスト以外はほとんど登場せず。完全レンジャーズ目線で事件を新たな視点から見つめ直せる作品でした。
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