えくそしす島

SKIN 短編のえくそしす島のレビュー・感想・評価

SKIN 短編(2018年製作の映画)
4.0
【無垢】

第91回アカデミー賞 短編映画賞 受賞作品

監督:ガイ・ナティーヴ
原案:シャロン・メイモン
脚本:ガイ・ナティーヴ、シャロン・メイモン

子供がニコニコしてる。いやー、見ているだけで癒される。20分と短い作品ながら笑顔が沢山だ。

“その物語の根深さに反して“

凶悪犯罪者などの生い立ちを調べると「環境が悪かった」とよく見かける。なら一口に言う「悪い環境」とは何だろう。

貧困?いじめ?育児放棄?愛情に恵まれなかった?今作で描かれているのはどれも違う。

他作だが、ドキュメンタリー作品の「娘は戦場で生まれた」で、未だに思い出すシーンがある。

それは、大人でも反射で跳び上がる様な凄まじい爆撃音の中、ニコニコしていたり、スヤスヤ寝ている赤ちゃんを映しているシーン。その時に、ああ、どうやっても言葉や教育では届かない世界がある、と思ってしまった。自我が芽生える前、“自分の土台“が白じゃない日常があると。
お腹にいる時から聞いている爆撃音は、その子にとっては子守唄なのだろう。

ネルソン・マンデラの言葉もよぎった。
「生まれたときから、肌の色や育ち、宗教で他人を憎む人などいない。人は憎むことを学ぶのだ。」

憎むことを学ぶ以前から、白地のキャンパスにペンキをぶち撒けられる怖さ、ぶち撒けられた後の怖さ、そして学んでいない筈の憎悪の怖さ。

長編の「SKIN/スキン」にはこの根の部分が、稚拙で薄く「おままごと」に見えた。

だが、この短編にはそれに近い怖さがありながらも、わかりやすく且つ簡潔、差別の皮肉さと滑稽さ、その後にずーっと続く余韻と強烈なメッセージまでも感じさせてくれる。そして、何よりも大事な映画的な面白さがある。

長編は「レイシズムの円環と切れ目」を表しているがこの作品は違う。

まるで「レイシズムのメビウスの輪」を見ているようだ。

切れ目は未だ見つからない