あやこふ

スキャンダルのあやこふのレビュー・感想・評価

スキャンダル(2019年製作の映画)
4.8
セクハラを拒んでも、サバイブしてトップまで登り詰めた者と、拒否したがために左遷させられ、理由も告げられずに解雇された者、そしてキャリアアップのためと要求に従った者。
三者三様の葛藤を描く事で、セクハラが1人の人間の人生にどれだけ大きな影響を及ぼすのか、どれだけ重い罪なのかがよく伝えられていたと思う。

顔も名前も知られる立場にいながら全てを失う覚悟で訴訟を起こしたグレッチェンが訴訟を決意するのにどれだけ悩み葛藤したのだろうと思うと辛い。それでも声をあげ、どんな批判を受けても立っていられたのは、自分の娘が社会に出た時にこんな経験をさせたくないという強い思いもあったのだろう。電話をしながら娘を見つめるシーンが印象的だった。

メーガンの、仕事上のボスとしてロジャーに少なからず恩義を感じているがために過去を証言する決心がなかなかできないというのも、セクハラ被害者が声をあげられない理由もまた様々だというのを物語っていた。

1番身近で共感したのはケイラで彼女がセクハラを強要された時の表情や断れずに従ってしまうところなどとてもリアルであのシーンは本当に観ているのが辛かった。恐怖と混乱で固まったマーゴット・ロビーの表情が忘れられない。
彼女は証言した他の被害者たちの象徴であり、泣き寝入りしたままの多くの被害者女性の象徴でもあるのだろう。

最後のモノローグのように、被害者たちは訴訟の勝ち負けや謝罪の有無に関わらず、自分に非があったのではないかと問い続けてしまうし、記憶は一生なくならない。

女性たちが声をあげられる社会、だけでなく、そもそもあんな行為が行われない社会にしていかなくては。道のりは長い。