てっぺい

浅田家!のてっぺいのレビュー・感想・評価

浅田家!(2020年製作の映画)
4.0
【家族に会いたくなる映画】
コスプレで家族写真を撮っちゃう仲良し家族。そんな写真家の次男の成功物語と、東日本大震災が家族のキーワードで見事に繋がる脚本力。様々な角度から描かれる家族愛の雨に打たれ続けて、見終わるともう家族に会いたくなる。
◆概要
監督・脚本:「湯を沸かすほどの熱い愛」中野量太
原案:浅田政志「浅田家」「アルバムのチカラ」
出演:二宮和也、妻夫木聡
◆ストーリー
様々なシチュエーションを設定しては家族でコスプレして撮影する写真家、浅田政志。全国の家族写真の撮影を引き受けるようになり、その家族ならではの写真を模索・撮影するうちに、戸惑いを感じ始める。そんなある日、東日本大震災が起こり……。
◆見どころ
中野監督ならでは、人と人との心のぶつかり合いが胸を打つ。浅田家の家族愛、そして写真を通じて色んな家族愛の形が繋がっていく脚本もさすが。笑って泣けて、なんだかとっても家族に会いたくなるほっこり人間ドラマ。
◆家族愛
コスプレ家族写真を撮っちゃう仲良し家族。それだけで十分伝わってくる家族愛が、いつも食卓を笑顔で囲み、家族それぞれのそれぞれに対する思いやりと共に描かれ、なんだかとっても家族に会いたくなる。また本作では家庭でのシーンが食卓ばかりなのが印象的。父の誕生日祝いやたこ焼き、家族の象徴が食卓を中心に、同じ時間に同じ物を食べる、まるでサザエさんなとても当たり前な事だけど、家族の原型がそこに描かれていたと思う。個人的にも、自分が実は同じ家族構成の次男である事もあり、自由な自分の人生もどこか重ねながら見てしまった笑

◆以下ネタバレ

◆二つの原案
本作では、二つの原案(浅田家と、写真を洗うボランティア)を一つの脚本にまとめている。後述の通り、中野監督はそれをどう繋げるかに苦労したそうだけど、家族という繋がりでそれを見事にまとめ上げていたと思う。前半は、家族愛満タンのほっこりな展開。後半は、娘を亡くした父の愛(写真を探すシーンには涙が止まらなくなった)や、父を亡くした家族の愛、それらが写真という本作のテーマを通じて繋がっていく。そして被災地と政志を繋いだ高原家という家族。見ていて全く違和感がなかったのは、本作がそんな写真と家族愛の一本柱で繋がっていたからだと思う。
◆二宮和也
圧巻は佐伯家(脳腫瘍の子を抱えた家族)の写真を撮影する時の涙。元々は泣く脚本ではなかったそうで、その場の監督の勘で別テイク、涙を流してみるよう依頼したのだとか。カメラが寄ってさほど間もなく、涙の粒を落とせるあの演技力は拍手もの(個人的には「湯を沸かすほどの熱い愛」での病床の宮沢りえの涙を思い出させるレベルの高さ)。「検察側の罪人」で見せた激昂アドリブ取り調べにも驚いたけど、彼のアイドルの領域を超える演技力には毎度唸らされる。
◆映画表現
震災後、政志が岩手の根津に着いたシーンから、被災地での映像がフイルム調に変わっていた。原案の2つ目である「アルバムのチカラ」に場面が変わった事の表現か、はたまた実際の被災地への何らかの配慮か、何かを伝えたかったのだと思うけど、微細まで解釈出来なかった。もしお分かりになる方、ご意見ください。
◆言葉選び
若菜の「人生の賭けに勝ったみたいです」や母の「これが父が倒れても家を出て行く息子を送り出す母の痛みや」など、なんだか遠回しだけど直で響くと言うか、そんな言葉選びが心をくすぐる。「湯を沸かすほどの熱い愛」でもそうだったが、中野監督は本当にそんな変化球と見せかけた直球の巧い人だと思う。
◆トリビア
○中野監督作品は、本作含め、家族がそろって囲む食卓のシーンが多く、家族の定義はないが、象徴という意味では『食卓を囲む人たち』だと思う、と監督が語っている。(https://eiga.com/news/20201003/2/)
○ 前半(浅田さんが写真家になるまで)と後半(震災が起きて以降)のバランスが難しく、脚本は18稿に至った(https://www.banger.jp/movie/44313/)

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