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酔うと化け物になる父がつらいのdaiyuukiのレビュー・感想・評価

4.6
普段は無口で小心者だが、酔うと“化け物”になる父・田所トシフミ(渋川清彦)と、新興宗教にハマっている母・サエコ(ともさかりえ)。
そんな一風変わった家庭で育ったサキ(松本穂香)は、父のおかしな行動に悩まされるなか、次第に自分の気持ちに蓋をして過ごすようになっていた。
サキとは正反対で明るく活発な妹・フミ(今泉佑唯)や、学生時代からの親友たちに支えられながら、サキは家庭の崩壊を漫画に描き、笑い話に昇華してなんとか毎日を生きている。
そんなある日、トシフミに病気が発覚。それをきっかけに、サキはこれまで知ることのなかった父のことを知り、心にしまっていた父への想いに気付き始める……。
菊池真理子の同名コミックエッセイを映画化。
ストーリーは、原作コミックに忠実で、アル中の父のおかしな行動に振り回されるのに疲れ本音を押し殺している主人公サキの心の声を吹き出しにしたり、原作コミックのコマ割りを生かしたカメラワークが、サキが家庭の中の問題を友人などに相談出来ず期待して裏切られる繰り返しに疲弊して無気力になっていく閉塞感に陥ってしまい、酒にハマっている父と宗教にハマっている母の自分たちへの無関心に慣れてしまい深夜に電話して監視したりモラハラ発言する小説家志望の彼氏に束縛され支配されている状態を愛情とサキが錯覚してしまったり、父に無関心になりマンガを作ることに逃避したり、父に対する愛情と憎しみに引き裂かれるサキの苦悩が、松本穂香の等身大の演技と相まってリアルに描かれていて、アルコール中毒について詳しくない人でもアルコール中毒の家族を巻き込む底無し沼のような怖さと当事者と家族の苦しみがリアルに描かれている。
また原作コミックでは、はっきり描かれていなかったサキの父トシフミの人事部で働くが故に同僚に本音を吐けずストレスを抱えて酒と呑み仲間しか救いがなかった苦しさが、トシフミを演じる渋川清彦の演技と相まってリアルに描かれていた。
サキの成長は、DV彼氏との別れなどの中で、自分の家族が普通じゃないことなどに気づき父と母と訣別していく過程が、丁寧に描かれていて素晴らしいヒューマンドラマ映画に仕上がっていた。
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