ガーコ

酔うと化け物になる父がつらいのガーコのレビュー・感想・評価

5.0
ちょっと他人事とは思えない…。

私の家にちょっと似ている所があったのと、私自身も父親に似て、お酒でやらかして迷惑かける方の人間だったので…。

飲まない人からしたら、酔っ払いって本当に迷惑以外の何者ではない。
と、偉そうなことを言っているが、そんな事を私が知ったのは最近の話。

だから、原作者の菊池真理子さんに申し訳が立たない。

私の父親も、毎日午前様の人間で、あそこまでベロベロではないけれど、夜にも関わらず同僚を家に連れてくる人間でした。
夫婦共々よく喧嘩していたし、そのせいで私の母も宗教にハマった身。
このままじゃ嫌だなと思っていた矢先に、父親の単身赴任が決まって、疎遠になったのが逆に良かったのかもしれません。
我が家では、その辺りから父親のお酒の付き合いが減って、自炊するようになって、料理が好きな、お酒もほどほどの父親に変わったので救われましたが…。

でも、映画の父親は違う。
アルコール依存症状態で、吐くまで飲む、そして次の日何も覚えてない状態で仕事に行く。
その繰り返しは、菊池真理子さんにとって、苦痛でしかなかったと思います。

周りの人達も、アルコールが弱い父親にどんどんお酒を飲ませるからたちが悪い。
誰にも頼れない、孤立した状況の中で、彼女は自分の心に蓋をして、生きていく決意をする瞬間がとても悲しかったです。

家族を救えるのは家族だけと、心の片隅で思っているけれど、一度も謝らない父親の姿を見たら誰だって胸糞悪くて父親を嫌いになるだろうし、許そうとも思わないと思う。
血の繋がりって、本当に辛い。
家族を見捨てられないから、ズルズルと実家に暮らす2人の姉妹の姿が、我が家にダブって見えました。

今回、娘役を松本穂香ちゃん、父親役を渋川清彦さんが演じていますが、2人の親子っぷりがとてもリアルでした。
渋川清彦さんといえば、『閉鎖病棟』で暴力的なやくを演じていた印象が強がったので、また暴力かと思ったけれど、この映画では暴力的なシーンがほとんどなかったのが救われました。

監督さん曰く、穂花ちゃんはあの狸のような顔が、シリアスすぎなくて良かったとの事。
幸せな話ではないけれど家族の話なので、彼女のポワーンとした雰囲気はとても欲しかったのだそうです。

確かに、ちょっとポーッとしている感じに救われる部分が多くて良かった。
彼女は目で訴えるような演技がとても上手いので、語らずともその表情から全てを悟ることのできる素晴らしい役者さん。

この映画は2人のナイスコンビがあったからこそ、とてもリアルなのだと思いました。

個人的には、母親役のともさかりえさんもハマり役。
最近のともさかさんは、ちょっと一癖ある面白い人の役が多いので、今回もクスクス笑わせてもらいました。

決してコメディのような楽しい話ではないけれど、家族の話だからちょっと笑える話も隠れている所がなかなか複雑。

まずは、原作を読んで彼女の実体験を知ってから読むと、より一層リアルに感じられるかと思います。

私自身、もう泥酔しないと決めてから4年が経ちますが、まだまだ他人事とは思えない、酒は飲んでも飲まれないよう、今後も気をつけようと思いました。

素敵な映画をありがとうございました(^^)
ガーコ

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