ひば

ラストナイト・イン・ソーホーのひばのレビュー・感想・評価

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性加害描写がハイパー厳しいので無理な人はやめた方がよいですね。どうしてオシャレでキラキラしててかわいくてちょっと怖いの宣伝しかしてくれない?これまでのエドガーライト監督作の女性描写に疑問を感じていましたが、わたしにはやはり向いていなかったようです。残念です。女性の良いところだけをスポイトし可哀想なところや散り際さえ美しく、そして憎悪は露骨に醜悪に切り捨てた女性にパラノイアでぶつけるところが好ましくないのです。表面だけをなぞった(都合よく刈り取った)フェミニズムのようで、そしてフェミニズムではない。『ベイビードライバー』然りどうして悪と描きながら悪に肩入れしてしまうんだ?『プロミシングヤングウーマン』は極力直接見せなかったじゃない。性暴力のフラッシュバックをジャンプスケアかつジャンプスケアの頻度を重ねて娯楽ホラーの記号にしてくるから、"どう?怖いでしょ??"って見てきてるようでこっちの何もかもを踏みにじられてる気持ちになった。キャラクターも相変わらずステレオタイプ。黒人の扱い方もあれでよいのか。意地悪な女の子を出すにしろあそこまで男性社会に迎合的で主人公が何をするにも気にくわないので意地でも嫌がらせに執着する女の子設定に????努力家な田舎娘と対にするように露悪的な都会娘とかもう見たくないんだが…『キューティーブロンド』『ファイティングファミリー』見てよ…女のステレオ色も『ベイビードライバー』や『スコットピルグリム』に通じるものがある。良いところとしては、ちょっと前に久しぶりに『ホットファズ』見たらあのエドガーライトテンポについてけず加齢を感じたのですがあのボブスレーに乗せられたようなスピードが逆にカオスを生み出してて。アニャちゃんの印象的な上品なピンクのドレスも下劣なネオンライトの下では台無しでそれも良かった。
個人的な話ですが、試写会場に向かう途中にぶつかり男にぶつかられ、会場で隣に座った男性はほんとに無理な人で(直接加害を受けたわけではありませんが女性が日常的に受けるハラスメント描写に大声で笑う人だった)、わたしにとってこの映画は夢でも幻想でもホラーでもない、昔のロンドンも今の日本もそう変わらない、ノスタルジアという郷愁のトッピングで重ね塗りされた現実と地続きだと気付いて悲しくなり申し訳ないですがインタビューが終わったらすぐ退出しました。何故女性とホラーは相性がよいのでしょうか?それは男性が女性の恐怖と抗いを搾取しているからだと思います。性搾取というファンタジーを。60年代へのラブレター?楽しかったか?と聞きたいですね、誰に聞きたいかはわからないけど、消費して終われるのはある種の特権ですよね。男性にとって学びがあったとして女性のわたしにとっては今さら何度も同じもん見せられてなんなのか?絶対に自分が傷つく立場にはない場にあると確信する男性へ『あの街は怖い』『自分も女性を傷付けないよう気を付けようと思った』なる啓蒙を、決して被害者目線にはなりえない感想を抱かせ終わりならそれは空しさ以外のなんでもありません。どの人間にも『まぁ女はよくこうなるよね…』と既存の諦観を抱かせ続けることもまた同じです。この映画の"優しさ"で溜飲が下がると?この心の淵まで込み上げてきたものを?知ったような口で…馬鹿にしやがって…ネタに使う割にはそういったことにたいして興味関心がないことは伝わってくるし、世の絶賛ムードのなか孤立極めた自分が空しいです。被害者の溜飲はなにをもってしても下がりません、なにをしても一生続く絶望だけ。性加害描写=ネタバレの扱いでいかなければいけないのかもとほんのり思ってたりしたのですが、他の方が言ってた通り性加害は物語のサプライズ(娯楽)ではないという認識が必要。私たちは金稼ぎのネタで存在してるわけじゃない。性的マイノリティも同じです。そういう意志でやっていこうと思います。一番面白かったの小島秀夫監督が出てきたのとリモートのエドガーライト監督が突然縮小(瞬間移動?)したところなんですがあれは幻ですか?見たのわたしだけ?
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