味噌のカツオ

ラストナイト・イン・ソーホーの味噌のカツオのレビュー・感想・評価

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予告編を見て「これは!」と思いまして。実際見てみたら、その予想以上にスゴかったという好例。

エドガー・ライト監督作は『ベイビー・ドライバー』で序盤のコーヒーを買いに行くシーンがサイコーに好きなんだけど。
今作も冒頭は音楽に合わせた主人公エロイーズのダンスがあって。そこで着てる“ニュースペーパーで作ったドレス”がメチャメチャ おしゃれでね。

ですが、ニュースペーパーもドレスも物語の中で、じつは なかなか意味のあるアイテムだというのが、これまたステキでした。

さて。エロイーズには両親がおらず、おばあちゃんに育てられた田舎娘という設定。そんなおばあちゃんの影響もあり、60年代のカルチャーにインスパイアされていると。
そして夢であるファッションデザイナーの勉強のため、ロンドンのソーホー地区にあるデザイン学校へ通うことに。

このソーホーというエリアは古き良き、英国カルチャーの残る街で。
そうした舞台設定もイカしてるし、ファッションも、使用される音楽もおしゃれで心地いいんですよ。

ところが、華やかなカルチャーの陰には確実に光と影があるという…そんなオハナシ。

さて、予告で見たイメージだと、現代に生きるエロイーズが60年代に生きるシンガーのサンディとシンクロして。
彼女に迫る危機をエロイーズが回避して助け出すというものだと感じたのですが。

確かにそれはそれで間違いはないかもだけど、実際はもう ひとひねりも ふたひねりもある作りで。
また事件解決のサスペンスというよりも、ホラーの要素を入れ込んだのも斬新。

オシャレな文化におどろおどろしい映像が重なったり、60年代のポップミュージックにホラー的インストがかぶさったり。
そんな見せ方にも引き込まれました。

60年代のショービズの世界には、ここで描かれているような問題は“当然のこと”として存在していて。
それから50年以上が経過した現代では、さすがにここまで露骨なアレは…と思う反面。

エンタメ、スポーツ?、政治? 様々な場での告発というものが行われているとおりで。
エロイーズとサンディがシンクロするように、セクハラ、パワハラ、略取といった問題提起は現在にも通じるところが、残念ながら存在するんですね。

そんなテーマ性の深さを、時にスタイリッシュであり、時に超怖いホラー演出にのせて見せて。
こちらもエロイーズと同じような旅をさせられるようで。

ラストの着地点は ひょっとすると「それでいいのか?」という方向に舵を切りそうだったのが、罪と罪というトコでもあり。成仏(?)というスタンスにもとれるのかな。

そもそも話の中心となる2人が魅力的で。
アニャ・テイラー=ジョイ演じるサンディはホント、お人形のようなキュートさで。
トーマシン・マッケンジーが演じたエロイーズも普通にかわいいんだけど、ヘアスタイルを変えて一気に破壊力が増したかと思えば、ハロウィンのホラーメイク後、目の周りに黒味が残ってダークな闇落ち演出になっていくというのも素晴らしかった。

そんなこんなで終始 気を抜けないほどにのめり込んで。見終わった後はグッタリ…というぐらい見応えありました。
いやぁスゴかったです。
味噌のカツオ

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