このレビューはネタバレを含みます
ベイビードライバーの監督の新作と聞けば
外すわけないと思って前情報ゼロで鑑賞。
持ち前の音楽センスが全編爆発していると共に
今回はホラー・サイケ表現と、60年代アメリカのレトロ表現のバランス力がハナマルで
「なんでこんなイケてない絵を見せられるの」って瞬間がただの1度もなく
終始美しく恐ろしくハラハラうっとりして
最&高でございました。
虚実織りまぜ系は一番大好きなジャンルなのですが
「あのシーンはどっち」ってなりがちなものの
今作はきちんと分かりやすくオチをつけてくれる親切設計。
途中までは作中唯一の「被害者」として描かれるジョンの行く末が
幸せになってよってめちゃくちゃ追いかけちゃってたんだけど
実は映ってる男全員被害者といえば被害者、
女も男も街に飲まれ、街として他者を飲み込む図太い都会の男女として描かれ、
勧善懲悪におさめないところも非常に好印象。
ただ最後のファッションショーの、ピンクのドレスの銀のエリだけが
悪夢的にダサくて
「え、またこれ夢オチになってない?大丈夫?」とそわそわしたけど
そう言えばエリーは1度も自分が主役の夢を見ていないので
エリーが主役なら現実なのよね、よかったよかった。
サンディがまるでバービーのように
完璧な女の子で
画面の端にチラと映るだけで美しくて
そんな絵を作れる女優もスタッフも監督にも
拍手喝采したい気持ち。
冒頭の雑誌で作ったドレスもカタチが素晴らしかったね。
大満足。
たまに部屋に流しておきたい映画。
この監督の映画って
BGM代わりに流したくなるような心地良さが常に流れてて
それはミュージックビデオ的なものではなくてちゃんと映画なんだけど
そのつなぎがまた心地よくて、センスの塊なんだろうな。
話としてはいずれも全然突飛じゃなくて
むしろオールディなのに
それを現在の感覚で焼き直して出してくれる
信頼出来るレストランのナポリタンみたいな。
次もその次も、絶対見るだろうなぁ。