レトーポ試験

ラストナイト・イン・ソーホーのレトーポ試験のレビュー・感想・評価

4.5
公開当時ぶりに再鑑賞。

個人的には、強烈で魅惑的な赤と青のネオンと現実と夢が交錯する映像演出の禍々しさが、映画内世界に完璧なお洒落雰囲気を創り出してて好き。場を盛り上げる音楽も最高。
エンディング曲の「Last Night in Soho」を死ぬほど聴いています。

ジャンルとしてはホラーに括られると思うけど、お洒落感が強すぎて別に怖くないし、どちらかというと気持ち悪いの方が的確。気色悪い男性視線の恐怖が露骨に表現されているものの、主人公たちとは性別が異なるので、表現のされ方を理解できても共感して恐怖を感じるまでには至らなかった。エロイーズが幻影として見るゾンビのような男性霊たち、その視線は昼も夜も関係ないし、場所も問わない。いつなんどきも有害な他者からの視線に晒されているっていうのは、そう考えると確かに怖いなと思った。終盤、借家での真っ赤なホラーシーンは怖いよりも、やっぱりキモいの方が強かった。

2回目見ると、銀髪の老人、さすがにミスリード狙い過ぎてる。どっかのタイミングでサラッと言えばいいこと(サラッと言えること)を、回りくどく濁して話し応えるばかりで、明らかに物語のためのミスリードを狙ったキャラでしかなかった。バラシ後すぐに退場したことも含めて。もうちょっと何か欲しかったし、キーパーソンとして機能してもいい気がした。

コンプラって何?って時代のショービズ界は本当に地獄だっただろうなと。男性のための道具として(性的な)搾取や加害は日常茶飯事だろうし、それを乗り越えてようやく表舞台に立てるシステムの中でどれだけの人が脱落していったのかは想像もできない。この映画では思わぬ逆転があって、ほんの一瞬、悪とされるものが助けを求めるけど、やっぱり彼らを擁護することはできないなと。男性視線の恐怖や気色悪さは充分に伝わる作品だと思うけど、これを見た男性諸君に何を啓示したいのかは結構不明瞭かなと。我が振り直せよって放り投げられたような感じ。それでいいのかもしれないけど。

マッケンジーちゃん、顔小さいのにおっぱい大きくてタイプだなぁーとか思って見進めていた自分が有害であると省りみざるを得ないし、下手にこういうことを言うのが憚られるような…。

個人的には、作品のテーマは二の次として、お洒落で魅惑的なネオンと映像の雰囲気が超好みな作品。

2021年の年末公開の作品だけど、去年末に比べると今年の年末は公開作品がちょっと渋い気がするなぁ~。去年は年末公開映画へのワクワクがとてつもなかった。
レトーポ試験

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