merrydeer

ラストナイト・イン・ソーホーのmerrydeerのレビュー・感想・評価

3.5
エドガー・ライト監督が、コルネット3部作からベイビー・ドライバーを経て、おふざけはほぼ無しで非常にストイックにサイコホラーを追求した印象の一本。

ファッションデザインを学ぶため、故郷を離れロンドンの学校へ進学し、新生活を始めることとなったエロイーズ(演: トーマシン・マッケンジー)は、遊び人だらけの寮のルームメイトや派手な都会生活に辟易し、女性限定の入居者を募集しているワンルームアパートへ移り住むことに。
故郷の祖母の影響で1960年代のイギリスファッションや音楽を好むエロイーズにピッタリな雰囲気を残す一室での生活を始めると、毎晩のように歌手志望のサンディ(演: アニャ・テイラー=ジョイ)の記憶を追体験する夢を見るようになる。
夢の舞台もこれまた憧れの60年代ロンドン。煌びやかな情景に安らぎを覚え、実生活も徐々に充実の兆しを見せ始めるものの、夢と現実の奇妙なシンクロ、そして夢の中のサンディの華やかなストーリーの崩壊と共にエロイーズの日常も徐々に狂い出す…。

ざっとあらすじを書くとこんな感じですが、ベイビー・ドライバーでも洒脱に魅せていた音楽×映像のシンクロで60年代のロンドンへの郷愁を華麗に描きつつ、やがて希望に満ちた日々にも暗雲が立ち込め、ショッキングな世界観にスムースに移行していく、この辺りの巧みさが実に見事で気付けばすっかり引き込まれてしまいました。

その秀逸な作品基盤を更に強固な映像作品にまで昇華してるのが、異なる美しさを持ったメインキャスト2人の画力(えぢから)の強烈さ。
アニャ・テイラー=ジョイの妖艶な雰囲気と不敵な表情が放つカリスマチックな存在感もトーマシン・マッケンジーの可憐な雰囲気とのギャップに圧倒される凄まじいヒステリック演技も、作品の魅力を存分に肥大化している気がします。
当アカウントにて、お二人ともまだまだ幼さの残る頃に出演していた作品の鑑賞記録をそれぞれ投稿しておりますが、着実にキャリアを重ね、今やすっかり作品を牽引するオーラを纏っていて、感慨深さを覚えると共に、その濃厚なキャリアの重みにただただ平伏すのみです。
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