シネラー

ラストナイト・イン・ソーホーのシネラーのレビュー・感想・評価

4.0
公開当時から興味はありつつも、
そのままだった本作をようやくの初鑑賞。
素晴らしい60年代の美術と
女性の社会的テーマを描いた作品であり、
男性としても鑑賞して良かったと思う
映画だった。

物語としては、
ファッションデザイナーを夢見る
エロイーズが、ロンドンのソーホー地区
で一人暮らしを始めるも
夢の中で60年代へとタイムスリップし、
そこで歌手を夢見るサンディに
心身をシンクロさせていく
サスペンス・ホラーとなっている。
現代のお洒落とは違う、
60年代独特の華やかさや楽曲にネオンが、
映画を通して感じられて良かった。
物語の前半にかけては、
懐かし味のある60年代に酔いしれていくが、
エロイーズが現実と夢の中を
狂わされていくに連れてホラー色が
強くなるのは良い構成だと思った。
一応、亡霊が襲う形式のホラー展開
となっていくのだが、
人間の性的に汚い社会が根底として
描写されており、
現代的なテーマだと感じる部分だった。
主役のエロイーズを演じる
トーマシン・マッケンジーは、
『ジョジョ・ラビット』から好きな
俳優ではあったが、
本作でもとても魅力的だった。

しかし、物語としての進展が遅く、
中盤にかけての現実や夢の混合から
亡霊に襲われていく場面は、
マンネリ染みているとも思った。
亡霊自体も登場する度に恐怖よりも
笑えてしまうのが、
ホラーとしては何とも言えなかった。
サスペンス部分に関しても、
特にエロイーズが事件を突き止める訳でなく、
犯人がベラベラと語るどんでん返し
となっているのは滑稽だった。

華やかな世界の裏の闇も描いた
現代的なホラーでありつつも、
60年代のノスタルジーに浸れる映画だった。
芸能分野の闇事情は万国共通なのか。
シネラー

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