みかんぼうや

ラストナイト・イン・ソーホーのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

3.8
【エドガー・ライトお得意のお洒落な映像と音楽とやや力押しながらラストまで動きのある展開で楽しませてくれるエンタメ感抜群のタイムリープサスペンス】

「ベイビー・ドライバー」のエドガー・ライト監督最新作。彼の作品は唯一観た「ベイビー・ドライバー」が、スタイリッシュな映像と音楽の使い方に徹底的に拘ったエンタメ性抜群の作品という印象で、その点では本作も全く同じ印象を持ちました。一方で、設定やジャンルはこの2作でもかなりかけ離れているので、作風の幅の広さも感じさせてくれます。

ジャンルとしてはタイムリープ物のホラー?ということですが、正直、ホラーというよりも、タイムリープサスペンス、と言ったほうが個人的にしっくりくる作品。後半の亡霊たちのゾンビ的動きはB級ホラー感出てますが、思わず笑っちゃう演出で、予告編からの印象に比べると、全く怖さは感じない作品でした(あのゾンビは、監督自身の過去作をオマージュした遊び心かな?実際どうなんでしょう?)。

前半は、本当に最初だけウディ・アレンの「ミッドナイト・イン・パリ」を思わせる、毎日夜眠りにつくと1960年代にタイムリープする展開で、当時のレトロな雰囲気がエドガー・ライト監督の拘りの映像とマッチしていて、凄くワクワクさせられます。「ミッドナイト・イン・パリ」の古き良きパリの舞台もとても好きでしたが、60年代のロンドンも華やかとクラシカルな渋みの両方を感じられるなんとも味のある雰囲気で素敵だな~、なんて思っていたあたりから、徐々に本作の本筋となるサスペンスの方向へ・・・

ネタバレになるので後半の内容にはあまり触れませんが、本作も「ベイビー・ドライバー」も、後半に入ると、どうもB級感というかハチャメチャ感が一気に増す気がします。映像や音楽の拘りやお洒落さと相反して、話の展開は「それアリ!?」と思うやや力押しな展開とベタな演出なのですよね。ただ、それで作品の評価が落ちるわけではなくて、それも含めて思いっきり分かりやすいエンタメに振っていて楽しめちゃうから全く問題ないのですが。

「ベイビー・ドライバー」の後半は勢いで押し切られた感がありますが、こちらは一応謎が解ける気持ちよさもあり(どの程度納得感があるかは人それぞれだと思いますが)、最後まで飽きさせないあたりはさすがでした。

エロイーズを演じたトーマシン・マッケンジーがとても可愛らしいなと思っていたら、「オールド」にも出ていたあの女性だったのですね。そして、これから観たいと思っている「ジョジョ・ラビット」にも出演という。かなり勢いがある女優さんなのですね。サンディを演じたアニャ・テイラー=ジョイも魅力的でした。

「ベイビー・ドライバー」同様、観終わった後は、「あ~、面白かった」という思いの後、何か心に残るものとか、人生の気づきや学びみたいなものはほぼ無いのですが(笑)、それも含めて、肩肘張らずに観られるこういった作品の良さでもあります。

エドガー・ライト作品は新しい2作品から観てしまいましたが、他の作品もこのノリが多いのかな?これからも色々な作品を観ていきたい監督の一人です。
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