Eyesworth

ラストナイト・イン・ソーホーのEyesworthのレビュー・感想・評価

4.9
【昨晩ソーホーで僕は人生をしくじった】

エドガー・ライト監督×アニャ・テイラー=ジョイ出演のロンドンが舞台のサイコロジカルホラー作品。

〈あらすじ〉
ロンドンのソーホー地区。ファッションデザイナーを夢見るエロイーズは、アパートでの1人暮らしを始める。あるとき新居で眠りに着くと、夢の中で60年代のソーホーにタイムスリップしてしまう。そこで魅惑的な女性に出会う彼女だが、やがてその女性にまつわる殺人事件に巻き込まれる…。

〈所感〉
こないだ見た『ショーン・オブ・ザ・デッド』が面白かったのでこちらも鑑賞。2作しか見てないけど、エドガー・ライト監督という人は音楽の使い方が本当に上手い。盛り上がり所の今ここ!しかないタイミングの当時の流行曲の選曲が素晴らしく、主人公の心情だったり、ロンドンの雰囲気だったり、時には得体の知れない恐怖感を増幅させることに成功している。原色の眩い赤色の照明、夢見る学生が寮に越してくる流れといいダリオ・アルジェント『サスペリア』を彷彿とさせられる。本作はタイムリープ物で毎日夢の中で見るアニャ・テイラー=ジョイ演じるサンディの謎を解くことが鍵なのであるが、彼女とのシンクロを通じて、エロイーズ自身も60年代レトロの衣装と髪型をした新たな自分へと変容し、自信をつけていく過程を見せる前半がとてもオシャレで素敵。それだけにそこからの文字通り悪夢のような展開はミスリードも多く予測ができず、一体誰が悪で加害者なんだ?と見ている我々も認知的不協和に陥り、エロイーズ同様夢と現実の交錯に苦しめられる。この快感と不快感、そして美(サンディ、エロイーズ)と醜(サンディに集うゾンビ男達)のバランスが絶妙にとれている点が非常にポイントが高い。階段のシーンの二人の女性が時間を超えてもつれ合う演出が凄すぎる。新時代のホラーだなぁと感じた。夢見る女を性的搾取する男の構造はいつまで経っても変わらないだろう。誰しも簡単に加害者にも被害者にもなれる昨今、自戒の念も込めて本作を見るべしと思った。あと都会に憧れる若者へ。都会は思ってるより怖いぞー。『ラストナイトインソーホー』っていうタイトルとまんま同じ名前な曲がエンドロールで流れる。なんか初めて聞いたとは思えない程の名曲でダウンロードしてハマってしまった。
Eyesworth

Eyesworth