雨丘もびり

アザーズの雨丘もびりのレビュー・感想・評価

アザーズ(2001年製作の映画)
5.0
【The others(=見放された親子)の決意】
脚本、演出、演技、こだわり抜いて醸造されたゴシック芸術映画。
言葉に頼らず、ゆたかに交わされる負の心情。ため息が出ます。

ランプの灯りに照されて、悲しく浮かび上がる影。
ラトゥールの絵のような、寄る辺ない美に見入る104分。
https://www.nga.gov/collection/art-object-page.54386.html

主人公の親子が抱える、どうしようもない闇の側面を、勇気をもって見つめ、失敗をやり直す決意を固める展開に、静かな感動をおぼえました。
うーーーん、見事。。。


新しい召使いたちに、礼儀正しくテキパキ指図する女主人。
「私の朝食は8時、子供たちは9時、昼食は13時、夕食は19時半にお願い」
「あの、旦那様は?」
「...主人は戦争に、1年半経っても連絡が無くて。料理の担当はどなた?」
「お気の毒に...」
「料理の担当はどなた?」

ここのシーンの、ニコール=キッドマンの「行間の悲しみをぜんぶ演じます!私はデキる!」っていうアピールがスゴいw。
ホンネをぎゅうぎゅう抑えつけて毅然と振舞う人物のギリギリ感がよく出てる。
やっぱり、凄まじく誠実な女優さん(敬)。

そしてフィオヌラ=フラナガンの優美なばーやっぷり(惚)
キャラクタの闇を明確に演じるニコールと、闇を闇のまま見据えるフィオヌラ。
お二人の演技が素晴らしかったです。


キリスト教義の正道を踏み外した人物たちが、たとえ神の元に召されない運命だったとしても、大切なことを守って生きてゆくと決意する物語。

なんだ、めっちゃいい話だったじゃん。

ホラー観たかったのにアテが外れました。深く感動(T_T)
音楽はちょっとアザトいかも。
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<ここ観てポイント>
・ランプの灯りが浮かび上がらせる影の美しさ
・登場人物の悲しい闇を表現する役者たち
・正道から落ちこぼれた母子の決意に感動