阪本嘉一好子

In the Last Days of the City(英題)の阪本嘉一好子のレビュー・感想・評価

5.0
In the Last Days of the City 2016年
監督Tamer El Said タミラ サイード
エジプト

個人的には稀にみる秀作だと思う。なぜなら、主役、映画製作者カリードの心境と (イギリスの俳優Khalid Abdallaカイト ラナー2007年)カリードが撮っている未完成の映画作品の心境が一致しているから。内向的なカリードの心の動きを詳細に追っているし。これがサイード監督のテーマの一つだと思う。

そして、そのなかで、全くフィクション映画らしいが、(エジプトの歴史を反映していると思った。)これを映画製作者役である主人公、カリードがカイロ(エジプト)の街を撮影している。カメラアングルもぼやかしたり、ものすごくアップで撮ったりして、不思議!

彼の映画製作者の友達(ドイツへ難民申請して、ドイツに住める難民許可書を持っていることを恥ずかしいと感じている友。、イラクのバクダットに住んでいる友、バッシム。レバノンのベイルートに住んでいる友)がカイロに集まりひと時を共に過ごし、それぞれの住まいに戻っていく。

友達の一人「バクダットが恋しい?」
バッシム「バクダットはただの町ではないんだよ。バクダットは友達なんだ。」
友達「口がきけない友達だね。」


映画製作者の友から送られる手紙やガールフレンドとの会話が私にとって全て詩的で、それに、友との会話は政治、人生、芸術などと幅広いが、何か人生最後の自由を味わっているような気がする。(全く違うんだが、、)

ムバラクが大統領の時のセッティングで、国民が彼をやめさせようとしてデモを起こしたり、イスラム原理主義の台頭がみられたり、街の洋服屋のウインドーのマネキンの服がピンクや赤の色からが黒のチャドルに変わったり、欧化主義のムバラク政権に批判が。
DV を例に男中心社会のモスリム社会をみせたり。。。政治的危機がよくわかるところがまるでドキュメンタリーのようだ。

カリードはこれらばかりでなく、個人へのインタビューもビデオに収めるが、どんな作品にしようか焦点を当てて決められず、編集者を苛立たせる。彼の性格は彼の撮った作品のように、一本筋が通っていない。これが、現在の彼の右か左かわからないどっちつかずで何をどう考えているかどうかわからない心境なのだ。でも、彼は静かに物事を観察している。

私感だが、周りは彼の煮え切らない行動や心境に苛立ちを感じているかもしれないが、内向性な彼はこの瞬間から何かをみいだそうとしていると思った。

バッシム「チグリスのの古い詩歌など文化は全ては知っているが、バクダットは将来危険だと。」「自分の国の古い文化を学び、身につけた教養を楽しんでいるが、バクダッドはもうそれができるところではない。」という意味かな?