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エリカ38のホッパーのネタバレレビュー・内容・結末

エリカ38(2018年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

映画批評

最初にはっきり言います。
この映画のストロングポイントは樹木希林プロデュースということです。

公開初日にこの映画を観て途方にくれました。面白いとは思えなかった。なんで樹木希林はこの映画を送り出したかったのかを考えるしかないと思いました。

まずは日比遊一監督の過去作の『健さん』という映画をみました。高倉健のイメージを崩さない敬意に満ちた若干、演出の入ったモキュメンタリーのようなドキュメンタリーでした。偶像性を壊さない良いところを語っていく映画だった。そんなところを評価して樹木希林さんは日比遊一監督を選んだのではなかろうか。

次に役者浅田美代子さんをあまり知らなく『あん』という映画を観ました。嫌われるどら焼き屋のオーナー役ははっきり言って上手かった。私の知っている『からくりテレビ』の浅田美代子さんとは違った。

さて『エリカ38』の映画の良いところを挙げたい。一点目はもちろん浅田美代子の体当たりの演技である。まさかポルノ・ピンク映画以外で熟女の立ちバックを見るとは夢にも思わなかった。まして元アイドルだそうだ。すっぴんのシーンも多かった。女性はだれもみな若く綺麗な時を経て人間こういうふうに老いていくのだとまざまざと突き付けられた。浅田美代子であってもである。自分も老いる、老いて周りに人がいなかった時のことを思うと怖さを感じる。

二点目はハッピーな話でないところも樹木希林プロデュース作品にふさわしい。「女の本性ってなんですか?」がこの映画のキャッチコピーだ。身近な男性であった父親は尊敬するには遠い男性だった。素晴らしいパートナーと思われた平澤も離れていき、童謡『あかとんぼ』ののフレーズ「お里の、たよりも、たえはてた」はエリカの孤独を象徴していた。エリカが最後に触れて手に入れたつもりになったのが異国の立場の弱い若いポルシェである。ポルシェからの敬意は手にした。そこにカタルシスはなく私は暗たんたる気持ちになった。

三点目、実はこの映画『月刊シナリオ』に映画公開前にシナリオが掲載されていた。エリカが母に向かって「死のうか」というシーン。シナリオでは「そんなのは男に言うセリフだよ」が母の返しだった。映画では「あたしはいいわ」になっていた。そういった現場感を感じれたのも良かった。

最後にこの映画の欠点を指摘したい。もともとマルチをやっていた女性が詐欺師に見いだされて詐欺師になりやがて破滅するというのがこの映画のあらすじだ。もっと本気で騙して欲しかった。詐欺師の話だからまるで呪文のような様子でこのセリフには意味はないという体で長台詞が続く。時間が無駄に思えてしまう。もっともっともらしい自分が信じるくらいの詐欺師の話術を見せてほしかった。

もしそうであれば最後のエンドロールに実際の被害者の声は入ってこなかったと思もう。実話、口当たりの良くない物語、体当たりの演技といいところはたくさんあるが内容がやはり物足りないのだ。実際の被害者の声を差し込まないとものたりないくらいテコ入れが必要だったのだ。この映画はテアトル新宿で公開4週目を迎えた。樹木希林プロデュースの力が大きいと思う。樹木希林は浅田美代子さんにひのき舞台をあげたかったのだと思う。2回目の鑑賞した際舞台挨拶に立つすくっと姿勢の綺麗な浅田美代子さんを拝見して思いました。

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初回レビュー

・人間不信になりそう
・当て書き浅田美代子
・エンドロールの音声


・人間不信になりそう
仲間内の映画批評の会の課題が『エリカ38』だったので観に行った。とりあえず感想。

『月刊シナリオ』にシナリオ掲載されていたので先にシナリオ読んでから行きました。監禁の章が気合入っていたように思っていたのでどんなふうになってるのか気にはなった。

まあ、マルチみたいなこともともとやっててよりでかい詐欺師に利用される。途中で詐欺師裏切って自分がなりかわって栄枯盛衰みたいな話。冒頭と結末がカンボジアの青年との恋なので正直な話あんまりみたいとは思わなかった。人間不信になるし人生の光の当たらない老いの部分不安になる。もっと言えば暗い気持ちになる。とはいえきっとこれが老いるってことの一つだよなあと。

・当て書き浅田美代子
樹木希林presentsで浅田美代子さんに何か残してあげたのかったのかなって。あげなかったものはなんだろう?一緒に映画をって気持ちだったのかな?ケレン味と言えばいいのかそういう映画だったんじゃなかろうか?この辺が考えがいがありそう。脚本ではエリカ「一緒に死のう」母「あんたそれは男に言うセリフだよ」だったと思う。映画では母「嫌だよ」だった。笑ってるお客さんいた。

・エンドロールの音声
ラストシーンのカメラ見据える浅田美代子さんはちょっと樹木希林さんみたいに見えた。エンドロール気になった。この映画は実話がもとになってて最後エンドロールで実際の被害者のインタビュー音声が流れる。15億の被害額とかぶっ飛んでる。それだけヒラサワなる人物、エリカって人は魅力的だったんだろうか?と思った。

そういうふうに思ってしまうってことはどうなんだろう?あの音声生々しいけど本当はもっとすごい話だったのかなって思ってしまった。

とはいえ1番面白いのはやっぱり主演当て書きで作ったってことなのかな。なんだろう。キラキラした映画の中で異彩だ。すごいギラギラした話だ。なんか石食べさせられたみたいだ。肚の中ゴロゴロしてる。
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