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主戦場のHMのレビュー・感想・評価

主戦場(2018年製作の映画)
3.8
渋谷イメージフォーラムにて。

慰安婦問題について、ざまざまな角度からのインタビューを集め、構成したドキュメンタリー。
インタビューに応じた人は右から左まで、立場も幅広い。よくぞここまで集めたなと驚いた。
ざまざまな言説が飛び交うなか不快な気持ちになるのを恐れ、SNSでは次第に自分と近い意見の人だけを見るようになってしまいがち。しかしこの映画で「慰安婦問題論争」としてパッケージ化されたインタビューを見ることで、自分とは異なる意見の人の話を聞くことができた。

人権意識の低さや文化的、構造的差別が弱い立場の人になにをもたらしたのか。
日本における女性の犠牲としては、満蒙開拓団で戦後女性達がソ連兵に対して強要された「性接待」が、従軍慰安婦問題と並行する「状況証拠」であるように思う。

平井 美帆 「ソ連兵の「性接待」を命じられた乙女たちの、70年後の告白
満州・黒川開拓団「乙女の碑」は訴える 」
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/52608


スピード感のある展開が、真相にたどり着くまでのミステリーのような高揚感を与える効果を発揮している。
しかし一方で、鑑賞者が別の視点から考える「間」が与えられていないようにも感じた。

アメリカの日系二世という監督の立ち位置から、アメリカを挟んだ日本、韓国というのがメインの視点だ。
だが歴史への態度という点ではドイツのあり方を加えることで、人権や差別に対してより重層的な議論や、未来への踏み出した方への想像力を持てたように思う。
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