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主戦場のチェックメイトのレビュー・感想・評価

主戦場(2018年製作の映画)
4.0
監督ミキ・デザキの旧日本軍従軍慰安婦についての疑問から発したドキュメンタリー。
ことさらに慰安婦問題を打ち消したがる歴史修正主義者達の言い分の無根拠性、ご都合主義が浮き彫りになっている。
ある程度(自分も含め)関連書籍を読んでいて考える頭があれば知っている、あるいは想定している内容でその点では特に驚きはない。

一応今までこの問題についての対立軸を監督はよく知らなかったからという前提での作品なので監督としては作品になりうるだろうということだろう。
この問題を端緒にして、
靖国神社→憲法改正→日本会議と、本質というか根本にたどり着いたことは評価できるし問題を俯瞰する意味で良かったと思う。全体像を理解する上で多くの人に見てほしい。

しかし現実に問題なのはメディアが忖度なのか自主規制なのかこういったバックグランドを報じないことと、教育基本法改正で教科書が積極的に記述をしなくなったことで(本当にそうか検証の余地ありだが)若年層が知識として知らないことだ。

そして修正主義者達は嘘も百編言えば真実になる的なやり方でろくに反対側の本も読まず(したがって検証もせず)歴史修正主義者達の望む方向に社会が向かいつつある。
明るいもの、心地良いことだけしか見ない考えない人間を増やし続けていく。

他の方のレビューにもありましたが中立的立場から見ればこれはこれでプロパガンダだという指摘は当たっている。でもそれはそれでもいいと思うし、むしろメディアが伝える努力も能力もない今、劣勢側の補強として良いと〈私は〉思う。

最後の方でかつて「朝まで生テレビ」などでお馴染みの憲法改正論者であり保守側の憲法学者小林節教授が、問題の本質(言い方に語弊があるが)が非常に危険でありそれに対しては自分の命をかけることも辞さないとのコメントに救われる。
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