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主戦場の会社員のレビュー・感想・評価

主戦場(2018年製作の映画)
3.0
インターネットへアクセス出来るようになった高校生の頃、いわゆるネトウヨ的な言説の数々に少なからず興奮を覚えたのは事実である。これまで誰も教えてくれなかった歴史の真実がそこに存在すると思い込んでいた。
しかし心身ともに成熟していく中で、特にヘイトスピーチ等の差別に対する嫌悪感が増し、また、学びを続け実証主義的価値観が養われていく中で、自然と彼らの言説に対する信頼は薄らぎ、リベラルに傾倒していった。

本作は、ある日系アメリカ人YouTuberが、膨大な取材や情報収集に基づき作成した、従軍慰安婦問題に関する問題意識を根底から問い直す映像作品である。
歴史修正主義、特に過激なネトウヨから攻撃を受けることの多い彼は、徹底した質の高い取材を元に、右左両派の主張や史実をテンポよく並べることにより、右派の根拠のない、あるいは誤りに基づく主張を次々と看破していく。ある国会議員のインタビューなどは、あまりの知性の欠如に呆れてものも言えない。

本作に出演する人々は皆、それぞれの考えや立場を持っている。論争を経ていく中で、大きな政争の具に取り込まれていく様子や、対抗策としての左派の主張までも先鋭化してしまう様子などが見事に描かれている。右派を糾弾する筋書きではあるが、リベラル自身も反省点は多くあるということは認識せねばならないだろう。

従軍慰安婦問題、ひいては日韓関係の問題などは、自分には無関係であると思う人が圧倒的多数を占めていると推測される。しかし知識や見識の重要性を痛感するシーンが数多くあり、リベラルに限らず広く見られるべき作品であった。
イデオロギーの対立における歴史的系譜という点で、従軍慰安婦問題に限らない普遍的な意義を持たせることに成功しているといえる。
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