のん

主戦場ののんのレビュー・感想・評価

主戦場(2018年製作の映画)
4.6
この国の真の敵

わたしがネトウヨとか自称愛国保守とかが大嫌いなのは、「普通の日本人」が「日本の誇りを取り戻す」などとのたまいながら、一方で差別的な扇動を繰り返して日本の誇りを著しく傷つけているその矛盾に耐えられないからだ。


映画『主戦場』は慰安婦問題を題材に、そんな自称愛国者たちの詐欺的主張を徹底的に白日の下に晒す超絶怒涛のドキュメンタリーだ。


ケント・ギルバートや杉田水脈先生は、映画の内容を知って大激怒だったらしいが、むしろ感謝すべきだろう。誇張でもなんでもなく彼らが普段主張している内容をこの映画は「正しく」切り取っているからだ。



歴史修正主義あるいは否定論者と呼ばれる人々が、いかに過去の認識を歪めていくのか、その方法についても映画では詳しく述べられている。


慰安婦の問題を例にとれば、主張の一貫性のなさや、数字などの矛盾点を突破口に、歴史の当事者を侮辱し、そして過去を「なかった」かのように振る舞うのだ。


こうした彼らの異様な執着は国を飛び越えてサンフランシスコの議会で「恥を知れ」とまで言われる始末だが、この原動力はどこに起因するのか、その背景にあるものを映画は追いかけていく。


日本会議というカルトど真ん中の集団をハブにして、色んなものが繋がっていく様子をテンポよく編集した映画の構成が見事で、これを見れば、この国が戦うべき相手は自ずと見えてくるだろう。


真の敵は韓国でも反日勢力でもない、歴史を歪曲し、忘却し、そして戦前へと回帰しようとする愛国者カルトと歴史修正主義者だ。そして、この戦いは現在進行形で続いている。
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