ナガエ

幸福な囚人のナガエのレビュー・感想・評価

幸福な囚人(2019年製作の映画)
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なかなかムチャクチャな映画だったなぁ。

物語は、最初の段階ではまったく繋がらないいくつかの断章が細切れに提示される。MVみたいな感じで、登場人物たちがほぼ喋らず、視覚的な映像の展開がしばらく続く。正直、なんのことだかさっぱり分からない。そういう時間を15分か20分ぐらい過ごした後、ようやく物語のメインの舞台であるオフィスのシーンが始まる。
しかしここでも、明確にはストーリーは展開されない。しばらく時間が経過しても、「状況の提示」しか行われない。主人公である澤田は、オフィスで働いているが、彼自身はほぼ喋らないし、特に何かしているわけではない。そこで描かれるのは、「オフィス内での悪口や、厄介な人間関係」である。この状況の説明も、後の方まで観ればどういう意図なのか分かるのだけど、最初はさっぱり理解できない。なぜ延々と、オフィス内の愚痴を聞かされているのか、見当もつかないのだ。
そんな感じで結構経った頃に、ようやく主人公を取り巻く状況が理解できるようになる。そこから、ようやく「物語」が始まる、という感じだった。だからとにかく、物語の始動が遅い。その点は、この映画の最大の欠点だと思う。

そこから、主人公を中心とした、幾人かの日常の苦悩が描かれるのだけど、この辺りは映画として割と良い感じだったと思う。特に、主人公の妻のあり方は、非常にリアルな感じがするし、この女性だけ、演技がずば抜けて上手かった気がする。

そんなこんなで後半に入ると、なんというのか、超展開になる。いや、まあ、伏線はないではないんだけど、さすがに色々無理あるだろ、という感じで、ちょっといただけない。やるなら、もう少し上手くやってほしかったなぁ、という感じだ。この後半の展開に持ち込むには、ちょっと色んなものが足りない気がしたし、主人公が途中で言うセリフになぞらえれば、「自分がこれまで見てきたものが、どこまでが現実でどこまでが虚構なのかわからない」という感じがする。個人的な好みの問題でもあるとは思うけど、後半の展開はちょっとどうかなぁ、という感じだった。

あと、この映画は、血がビシャビシャ飛び散る系の映画なんだけど、ちょっとその辺りも不満がある。撮影上の制約がきっとあったんだろうなとは思うんだけど、血まみれのシーンなのに、壁とかシャツとかに血が飛んでないんだよなぁ。あれは凄く不自然だった。これももう少し上手くやってほしかったなぁ、という感じがする。

全体的には、ちょっと不満の残る映画だったなぁ、という感じです。
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