こたつむり

ニノチカのこたつむりのレビュー・感想・評価

ニノチカ(1939年製作の映画)
3.7
★ 鉄を溶かすほどに熱く、ガルボ笑う

モノクロ映画って敷居が高いですよね。
だけど、その敷居を頑張って乗り越えれば…虚飾が少ないために物語の美味しい部分を堪能できるのです。まさしくシンプルイズベスト。質実剛健の極みなのです。

そして、本作の脚本はビリー・ワイルダー。
娯楽に献身的な御方ですからね。
適度にコミカルで、適度にロマンチック。見事なまでに“王道”の物語でした。

端的に言えば、共産圏を皮肉的に描いたロマンス。共産圏に対して否定的な姿勢ですが、じんわりと“自由の尊さ”が伝わる筆致なので心地良いのです。

また、主演はグレタ・ガルボ。
幕開けから彼女の名前がドドンと出ますし、タイトルの『ニノチカ』は彼女が演じた役名。まさしく、彼女の物語でした。

だから、画面いっぱいに拡がる彼女の魅力。
革命の理想を体現した“鉄仮面”のような佇まいすらもキュート。ひとつひとつの言葉に“迷い”がないからググッと前のめりなのです。

そして、何よりもレストランの場面は…うん。鷲掴みでしたね。スターは一瞬で世界を変えてしまう…そんな言葉が脳裏を駆け巡るほどに圧巻でした。

ただ、欲を言うならば。
彼女の相手役を演じたメルヴィン・ダグラスの人物描写が薄かったのは残念。《ニノチカ》が彼に惹かれる説得力が欲しかったのです。ただ、この辺りは個人の嗜好による部分が大きいですね。

まあ、そんなわけで。
軽妙なロマンスコメディながらも、1939年の作品ということで“ナチスドイツ”をギャグに用いたり、ソ連への皮肉が瀟洒だったり、なかなか趣深い作品。古い作品と侮らずに触れることをオススメします。

それにしても、素敵な物語のオチはあれで良いのか…今と価値観が違うからなのか、その緩さに驚くとともに頬が弛む次第。後味は最高ですよ。