コーカサス

ニノチカのコーカサスのレビュー・感想・評価

ニノチカ(1939年製作の映画)
4.8
“ガルボが笑った!”

ソ連からパリにやって来た筋金入りの共産党員ニノチカ (ガルボ)とプレイボーイの伯爵レオン (ダグラス)の恋を、風刺と笑いで描いた傑作。

1930年代を代表する“クール・ビューティー” ガルボが堅物から一変し、大笑いする場面は、公開当時「笑わないガルボが笑った」と話題になり、その笑顔はとても可愛く心奪われる。

前半、笑わないニノチカに一目惚れしたレオンは何とか彼女を笑わせようと…

レオン「少しは僕の事が好きかい?」
ニノチカ「外見は不愉快じゃないわ。白目が澄んでいるし、瞳孔も美しい」
レオン「君の瞳孔もステキだ」

レオン「君みたいな人は初めてだ。ニノチカ、ニノチカ…!」
ニノチカ「2回言ったわね」

レオン「真夜中だ。時計の針と針が重なりキスをしている」
ニノチカ「時計なら当然の動きだわ」
レオン「真夜中はパリの恋人たちが愛を交わす時間だ」

…必死に頑張るレオンもチャーミング。

やがて、ふたりの仲も急接近。
ニノチカは資本主義に理解と憧れを示すようになる。

「不思議ね。私たちの国 (ソ連)はまだ雪景色なのに、ここ (パリ)には鳥が。冬にツバメたちは資本主義国へ飛んでいく理由が分かったわ。ソ連には理想があり、ここ (パリ)には暖かい気候がある」

その後、ソ連に戻ったニノチカにレオンから手紙が届くも、検閲で全てが黒く塗りつぶされていた。
悲しむニノチカに「思い出までは検閲できません」…そう慰めるブリヤノフの台詞も素晴らしい。

レオン「何度書いても返送されてくる」
ニノチカ「届いたのは真っ黒で読めなかった。読めるのは“愛するニノチカへ”、 “君のレオンより”だけ」
レオン「書いたことはこれからの態度で示すよ。すべて伝えるには一生かかる」

この洗練された数多くの台詞の応酬は、当時ルビッチ監督の弟子だったビリー・ワイルダーが脚本に参加したことも手伝い、より一層の磨きがかけられた。

これだけの名シーン、名台詞が盛り込まれた映画を何年ぶりに観ただろう。

“映画が好きで良かった”
そう思わせる名作にまた一つ出会えた。

197 2020