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華麗なるギャツビーのp99のレビュー・感想・評価

華麗なるギャツビー(1974年製作の映画)
3.6
ギャツビーの一途な恋心が描かれるが、彼の行動はかなり極端なものである。デイズィという一人の女性へ10年ほど憧れを抱き続けるだけでもすごいのに、ギャツビーは上流階級の彼女と結婚するために苦心して金儲けをして、彼女の家の近くに大邸宅を建てるという回りくどいことを大真面目に行ったのだ。

まあ、ここまでは強すぎる愛ゆえかなとも思えるが、彼女にはもう夫がいて、ギャツビーはそのことを知ってもなお彼女を求める。現在の価値観で言えばストーカーそのものだし、決して褒められるものではない。しかし、ギャツビーはそれでいても魅力的なのだ。なぜなら本作には彼を遠巻きに眺める語り部がいるからである。

語り部はニックという一人の庶民である。彼は本作の登場人物の中で唯一の常識人であり、モラリストである。彼がいなければ本作はギャツビーの勝手な独り舞台に終わっていたに違いない。ニックは彼の心に同情し、全て承知した上で彼の幸せを願うのだ。基本的に原作小説に準じている本作だが、特にギャツビーとニックの関係が上手く描かれていると思う。

全体的には、やはり原作を読むほうが深い感慨を得られるだろう。登場人物の心情を映像で描くことはどうしても難しい。その分なにか目で楽しめる魅せ場があればと思ったが、ほぼ原作小説を読んで頭の中で想像していた映像が流れるものだから、そこが少し残念だった。原作に忠実であろうとするが故に、小ぢんまりとした作品に収まってしまった印象だ。

しかし、なぜデイズィじゃなきゃいけなかったのか、そこがギャツビー最大の謎かもしれない。見た目はいいかもしれないが、その性格において惹かれるものなど見つけられなかった。そこがまたギャツビーへの哀愁を誘う一因となっている。
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