カタパルトスープレックス

連合艦隊司令長官 山本五十六のカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

3.2
「東宝8.15シリーズ」の第二作目です。監督は戦争映画を得意とした丸山誠二監督。円谷英二が最後に手がけた空中戦としても有名な作品です。特撮だけはとても観る価値のある映画です。

東宝といえば「ゴジラシリーズ」ですが、すでに人気に陰りが出た『怪獣総進撃』(1968年)と同じ時期の公開作品となります。円谷英二もゴジラ映画からは「監修」と一歩下がった立場でしたが、本作ではバリバリ特技監督として手腕を発揮しています。

本作も「ゴジラシリーズ」と同様で人間のドラマパートと特撮の戦闘パートに分けることができます。特撮パートは流石の円谷英二。素晴らしいです。今のCGIのドッグファイトとはまた別の意味で「よくここまで作り込むなあ」と見入ってしまいます。

人間ドラマとしては山本五十六(三船敏郎)の魅力を描く作品となっています。ただ、この部分に関して言えば可もなく不可もなくです。これは山本五十六をどのように評価しているか。個人の山本五十六像にかなり印象は左右されると思います。

山本五十六はとても魅力的な人物であったことは間違い無いでしょう。ボクも「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」の名言は大好きです。本作でも日米開戦に反対した平和主義者として描かれています。ただ、やっぱり戦争は止められなかったし、真珠湾攻撃も振り返ってみれば決して良い作戦ではなかったです。

満州事変を起こした石原莞爾もそうなんですが、戦争に深入りするきっかけを作った軍人を庇う傾向がありますよね。何を考えていたか、どんな信念だったかは今となっては故人なのでよく分かりません。しかし、真珠湾攻撃も満州事変も日本を戦争の泥沼に引き込んだ作戦だったと思うし、それを主導した山本五十六と石原莞爾をそれを抜きにして評価するのってどうかと思います。

……と言うわけで、ボクは(人間的な魅力は認めつつも)山本五十六は軍人/政治家としては評価していないので、本作で描かれる山本五十六像も少しクールな感じで観てしまいましたね。