こたつむり

ミッドサマーのこたつむりのレビュー・感想・評価

ミッドサマー(2019年製作の映画)
3.7
♪ 僕らは大事な時間を意味もなく削ってた
  「なあなあ」のナイフで 

この作品をホラーと呼んで良いのでしょうか。

確かに気持ち悪い物語でした。
登場人物たちには共感できず(特に主人公!)。身体の中で蟲が這いずり回るような違和感が今も残っています。

でも、それを拒否すれば良いのでしょうか。
勿論、不快な感情は魂の危険信号。無理に受け止める必要はありません。しかし、自分に理解できないから切り捨てる…それは誤りだと僕らは歴史から学んでいるはず。

サイコロで1の裏が6のように。
真正面から観ただけでは全体を掴めません。
右から、左から、斜めから…様々な角度から検証することによって事実は確固たるものになるのです。

それは映画だって同じですよね。
距離を変えたり、角度を変えたり、ひねもすのたりのたりかな。本作が違う世界へと続く扉の“鍵”となる可能性も否めないのです。

それは民俗学の世界かもしれません。
それは男性社会への問題意識かもしれません。
それはハリウッド的な文法を批判する“挑戦”かもしれません。

手に入れたものは人それぞれ。
勿論、僕が単純に歪んでいるだけかもしれませんし、羨望の眼差しを得たいがために“上から目線”で騙っている可能性もあります(ふふふ…)。

ただ、それが全て悪いとも言えないのです。
本作にしても一部の演出に迷いを感じましたが、作品の複雑さに寄与していました。そして、それは監督さんの自意識の高さゆえに導かれた可能性もあるのです。

そう。何が良い方向に作用するかなんて…誰にも分からないのです。

まあ、そんなわけで。
視点を変えれば再生の物語。
映画は“楽しんだ者勝ち”ですからね。食卓の上の食べ物がグニャリと歪んだ向こう側に“異なる価値観”が存在する…その想いが勝利への近道だと思います。勿論、逃げ出すのも自由ですが…。
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